震災慈善試合…発起人吉田孝行氏の思い

 6434人の尊い命を奪った阪神・淡路大震災から20年を迎えた17日、ノエビアスタジアム神戸で「阪神・淡路大震災20年 1・17チャリティーマッチ」が開催された。J1神戸の現役、OB選手による「KOBE DREAMS」と元日本代表選手からなる「JAPAN STARS」が対戦。FW三浦知良(47)=横浜FC=の2ゴールなどで「KOBE DREAMS」が3-2で勝利した。

 2万4052人の大観衆を集め、大成功に終わったチャリティーマッチ。大会発起人を務めたのは地元兵庫県川西市出身で、08年から現役を引退した13年まで神戸に在籍した吉田孝行氏(37)=現神戸アンバサダー=だった。

 当時、滝川二高3年だった吉田氏は川西市内の自宅で震災を体験した。「登校前に顔を洗っていると衝撃が来て停電になった。それほど被害があった訳ではないので、学校に行こうと親に駅まで送ってもらったが、電車は全く動いてない。携帯電話もない時代で情報が何もなかった。テレビが昼過ぎについた時に、ようやく神戸が大変なことになっていると知った」と振り返る。そのまま学校に通うことなく卒業し、横浜Fに入団した。

 プロ入り後も故郷のことは気に掛けていた。07年オフ、横浜Mを戦力外となった吉田氏の下へ真っ先に神戸からオファーが届く。「神戸で何年出来るか分からないけど、ここで引退したいし、自分の経験を伝えたい」と入団を決意。主将を務めるなど6シーズンにわたってチームをけん引した。

 引退後の昨年1月、カレンダーを調べると今年の1月17日が土曜日だと気付いた。「震災から20年ということで自分に何が出来るのかと考えた時に、いろいろなチャリティーマッチに出てスポーツのメッセージ性、伝える力の強さを感じていた。東北をはじめ、いろいろなところにメッセージを込められる」。吉田氏はチャリティーマッチの開催を決断した。

 横浜M時代の指揮官だった岡田監督、01年から05年7月まで神戸に在籍したFW三浦知良、同じ77年生まれの同級生で、93年に日本で開催されたU-17世界選手権(現U-17W杯)にそろって出場した中田英寿氏…、一人一人に連絡を取り、直接参加を呼び掛けた。その情熱に多くの人々が賛同し、吉田氏を含めた52人が集まった。

 試合には愛着ある背番号17を背負って出場。惜しくも無得点に終わったが、後半34分にはFW三浦知の2得点目をアシストするなど会場を十分に沸かせた。「みんな僕と同じ思いで戦ってくれた」と表情に充実感を漂わせた。

 震災の年に生まれた子どもたちが今年成人式を迎えた。20年という年月を感じさせるが「今日という日を決して忘れてはいけない。震災を知らない次の世代にもつないでいかなければいけない」と吉田氏は力を込めた。サッカーを通して伝えた思い。「1・17」は忘れられない一日になったはずだ。

(デイリースポーツ・山本直弘)

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