世界イチ!50歳現役へ続く孤高の挑戦

 「パドレス6-3マーリンズ」(15日、サンディエゴ)

 ついにこの瞬間が訪れた。マーリンズのイチロー外野手(42)がパドレス戦に「1番・右翼」で出場。5打数2安打でピート・ローズの持つメジャー記録の4256安打を日米通算で上回り、4257安打とした。初回に捕前安打を記録し、九回に右翼線へ二塁打を放った。メジャー通算3000安打までは、あと21本となった。

 敵も、味方も、観客も、みんなの心が一つになった。2つの国で積み上げた4257本ものヒットへの敬意。やむことのない拍手と歓声に、イチローがヘルメットを取って感謝した。「記録(達成)のときはいつもそうですけど、ああいう反応をしてもらえるとすっごくうれしい」。野球に国境はなかった。

 30年間、破られることのなかった記録に王手をかけて臨んだ試合。プレーボール直後の内野安打と九回2死からの右翼線二塁打で一気に抜き去った。25年、3363試合、14339打席。とてつもない時間をかけて到達した世界一の頂だったが、イチローは開口一番、「ここにゴールを設定したことがないのでそんなに大きなことという感じは全くない」。日米合算に嫌悪感を示し続けるローズ氏の態度が悲しすぎた。

 今季も打撃フォームを練り上げた。昨季は打率・229と苦しんだ。大きな変化は軸となる左足にあった。右足の踏み込みと同時に地面を蹴るようにして力強く前に出た。爆発的な体重移動。打撃練習用シューズの左足親指部分の布地が破れるようになった。昨季にはなかった現象だ。軸足にためた力がしっかりバットに伝わっている。打球の速さとチーム最高の打率が証明している。

 試合後の会見。イチローの口調が熱を帯びたのは自身の野球人生を語ったときだ。プロを目指して練習に明け暮れた少年時代。メジャー移籍時に首位打者を獲りたいと言ったこともある。

 「僕は子供のころから人に笑われてきたことを常に達成してきてるという自負はある。これからもそれをクリアしていきたいという思いはもちろんあります」

 次なる節目はメジャー通算3000安打。50歳現役もすでに公言している。イチローの言葉を笑う者はもういない。

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