国内最高齢14歳SS産駒は老いて盛ん

 もう半月ほど前になるが、藤田菜七子騎手(18)=美浦・根本康広厩舎=が盛岡競馬場を訪れた16日、かの地はかつてないほどの盛り上がりを見せたそうだ。前年比で3倍のお客さんが訪れ、馬券の売り上げも1・5倍に。どの関係者も「売れるとは思っていましたが、まさかここまでとは…」と驚きを隠さない。全国各地を飛び回る18歳のアイドルジョッキーが、行く先々でもたらしてきた経済効果はいかほどか。

 さて、そんな菜七子ちゃんが盛岡で騎乗した馬の中でも、パドックを回っている時からひときわ熱い声援とシャッター音を浴びていた馬がいた。ビュレットライナー(牡、岩手・佐藤雅彦厩舎)である。

 御年14歳。ネットニュースなどで既にご存じのファンも多いだろうが、父は大種牡馬サンデーサイレンス。国内にわずか2頭しかいない現役SS産駒のうち、最高齢の1頭である。02年生まれなので、同級生はあの7冠馬ディープインパクトだ。

 馬上のアイドルに合わせ、厩舎があつらえたというピンクのメンコのど真ん中には“菜”の文字が。管理する佐藤雅彦調教師が明かす。

 「ビュレットが、ちょっとでも目立ってくれればと思いましてね。とにかく注目してもらいたかったんです。これだけ頑張っている馬がいるんだぞと」

 はっきり言うと、重賞タイトルを獲るほどの強い馬でもない。それでも、人間ならおじいちゃんに相当する14歳馬が懸命に四肢を伸ばし、通算160戦以上、走破距離は約240キロと、東京-名古屋間(約260キロ)も間近に迫るほどに走り続けてきたというのはすごいこと。そうさせているのは人間じゃないか、なんて競馬の原罪については言うなかれ。その頑張りを見るたびに、つい頭が下がるのは自然な思いだ。

 もちろん、地方にはビュレットを超える鉄の馬はいるにはいるが、これほどまでに壮健な高齢馬は珍しいのではないか。昨年は計23戦を消化と、自身の年間出走回数を更新。老いてますます盛んである。「普段は手がかかることがない。でも、激しい気性は持っている。そのあたりは父譲りなんでしょうか。馬っけも出しますからね。馬自身は、自分が14歳だなんて思っていないでしょ(笑い)」とトレーナー。28日には中1週で再び盛岡で力走。4着に終わったものの、果敢にハナを切って見せ場をつくっていた。

 現役SS産駒のもう1頭、ダークドーン(牡13歳、岡田利一厩舎)は園田の馬だ。こちらは種付けされた母エジラールが海を渡り、英国で出産したため、外国馬として日本に入ってきたという変わり種。昨年8月の出走を最後に休養中だが、「昨年、夏負けで体調を崩したあと、右前にも気になるところがあって休みが長くなった。でも、乗り込みを開始していますし、調子が上がってきましたよ」と岡田利一調教師は復帰に向けて前向きな言葉を並べる。まだまだ現役続行中。ビュレットライナーともども、元気な走りを見せてもらいたいものだ。(デイリースポーツ・長崎弘典)

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