池添の“オルフェを超える馬”とは…

 中山競馬場、最後の直線。もっともっと一緒にいる時間がほしい。池添がオルフェーヴルとのラストコンタクトを味わうには、310メートルの距離は短すぎたか。昨年末に行われた第58回有馬記念。どこまで走っても、オルフェーヴルは負けない。スターホースの引退レースは、主役の強さだけが際立つ8馬身差の圧勝劇で幕を閉じた。 12月23日のデイリースポーツでは、池添が鞍上からオルフェーヴルの首筋に抱きつく写真を大きく掲載したが、その目は、我が子を見つめるように、実に優しかった。

 「この馬に出会えて、本当に良かった」。栄光だけではない。阪神大賞典での逸走、凱旋門賞での外国人騎手への乗り替わり。悔しい思いもしただけに、有馬記念は格別の思いだったに違いない。そして池添&オルフェーヴルのコンビだったからこそ、競馬ファンもまた、素直に勝利の賛辞を送れたのではないだろうか。こんなコテコテの人情ドラマも悪くはない。 そのレースの直前、インタビューに立ち会う機会があった。有馬記念へ向けた、オルフェーヴルへの思いを聞くことが主目的だったが、もちろん話はそれだけにとどまらず…。

 「1歳にオルフェの弟がいるんです。ほんと、そっくりですよ」。池添はズボンの後ろポケットから携帯を取り出すと、昨年夏に自ら北海道に出向いて撮影してきた写真を披露した。

 額から鼻にかけて白く、脚の先が4本とも白い(オルフェーヴルは3本)、四白流星の栗毛の馬体はオルフェーヴルに瓜二つ。年が明け2歳となったオルフェーヴルの全弟は、早ければ今年中にデビューするが、池添騎乗となれば、競馬ファンにはまた新たな楽しみができることになる。 「将来、オルフェの子供に乗ることも楽しみですね」。池添の話を聞いていると、体内にはオルフェーヴルの血が流れているのではと思えてくるほど。有馬記念の圧勝で、両者の絆はより強固なものとなったが、実は心の内に、どの馬とも比較することができない別格の馬が1頭、存在している。 「あの馬がいたから、オルフェにも出会えた」。あの馬とは、03年にスプリンターズSとマイルCSを制したデュランダルだ。

 池添にとってのG1初制覇は02年桜花賞のアローキャリーだが、本当の意味で一流ジョッキーとしての道を歩みだしたのは、乗り難しいこの馬を手の内に入れてから。スイープトウショウ、ドリームジャーニー、そして池添のG1ロードは、オルフェーヴルへと続いてきた。

 「この先も変えることはありません」。オルフェーヴル弟の写真が収められた池添の携帯電話の待ち受け画面は、今もデュランダルのままだ。(デイリースポーツ・玉森正人)

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