2人のキヨシ 今日もゼッコーチョー!

名曲「長崎は今日も雨だった」をデュエットする前川清(左)と中畑清監督=都内のテイチクエンタテインメント(撮影・園田高夫)
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 「2015年プロ野球開幕スペシャル」として、日本の歌謡界を代表する歌手・前川清(66)とプロ球界を盛り上げる横浜DeNAの中畑清監督(61)による「Wキヨシのビッグ対談」がデイリースポーツの独自企画として実現した。還暦を過ぎてなお、現役として精力的に活動する“2人のキヨシ”がジャンルを超え、野球や歌への思いを交えながら互いの生き様を語り尽くす。

 ◇    ◇

 中畑(以下、中)「どうも、お久しぶりです!」

 前川(以下、前)「いやいや監督!どうも。そういえば、監督とは昔、福島に一緒に行きましたね」

 中「僕の田舎で『Wキヨシのチャリティーコンサート』(2009年10月、福島県矢吹町での公演『ふたりのきよしの特別ステージ』)をやってもらった時ですね。立ち見続出でしたから。これがバカ受けでしたね」

 前「楽しかったですよ。それで今は監督としても中畑さんは楽しい」

 中「でも前川さんは間違いなく、僕が本当に監督をやると思ってなかったでしょう」

 前「いやいや、就任してうれしかったですよ」

 中「そうですか」

 前「ちょっと遠い人になってしまったけど」

 中「何を言っているですか!(笑)、この!Wキヨシでしょうよ」(前川の足を叩く)

 前「やっぱり『Wキヨシ』でいかないとね(笑)」

 中「そうそう(笑)」

 前「スポーツニュースを見ていると、よく中畑さんが出てくる。記者の皆さんが野球選手より監督のところに来て。中畑さんありきで、やっぱり采配するとかいうよりも…」

 中「采配してますよ、ちゃんと。何言ってるんですか(笑)」

 前「いや、事前にキャラクターが付いて回るじゃないですか。僕は分かるのです。中畑清という人物は、本当はそうじゃないけど、どうしてもいい人だからサービスしてしまうのですよね」

 中「そうなんですよ。でも僕はこのスタイルで監督をやり続けたいという願望がずっとあったのです」

 前「僕はいいと思います」

 中「俺しかできない監督像。それを若いころから持っていて。こういう監督でいいんじゃない!、と。プロ野球は興行。人気商売だし。ファンが付いてきてなんぼです。ファンの期待する部分って何だろうと思った時に、監督だろうと選手だろうと、みんなが商品価値の高いものにならなきゃいけない。だから、自分なりのオリジナリティーを考えた」

 前「絶対そこは大事。だからベイスターズは中畑さんで良かったと思う」

 中「そういう意見をいただけると(前川さんは)近くにいて私を知っている人間だなと思います。やっぱり『Wキヨシ』ですよ」

 前「そうですね。でも、中畑さんはジャイアンツ向きではなかったと思いますよ」

 中畑「なんで、そうハッキリ言うかな(笑)」

 前「やはりジャイアンツ気質ではなく、規格外なのです。それで中畑清の良さはベイスターズに行っても規格外なのです。僕はいろんな監督さんを見てきました。王(貞治)さんとか、いろんな方が好きでした。王さんは国民栄誉賞をもらったけど、中畑さんにはもらってほしくない」

 中「もらえないし(笑)」

 前「規格外と言えば、昔の西鉄ライオンズの選手は(酒を)飲んでも翌日には活躍するとか言われてましたね。今は時代が変わった。そんな中で中畑さんはパフォーマンスしている。もちろんベイスターズには勝ってもらいたい。僕は3位に入ったらいいと思う」

 中「エエッ(笑)」

 前「中畑監督がどんな監督になるのか、みんな興味があったと思う。でも、ジャイアンツの出身!と、お利口になるのでなく、そのままいったじゃないですか」

 中「ジャイアンツ気質じゃないということで言えば…。現役時代、甲子園で阪神ファンの方に、よく『お前はジャイアンツの顔じゃない!』『お前は縦じまのユニホーム着ろ』と言われましたね。江川(卓氏)とかが『豚の耳』とか言われている時に。それで今でも甲子園に行くと、温かい声を掛けていただく。広島でもね。うれしいですね。初めて長嶋(茂雄)さんに近づけたかなと感じました。球団の垣根を超えて。これが僕の目標です。これから先、いつまでもONに“おんぶにダッコ”じゃなく、少しずつ我々の時代に何ができたか。勢いだけじゃなく、こういった対談をしたり。少しでも球界を変えるキッカケになるのではないか、と思っている。もっともっと変えていかないと。僕が監督になって、横浜のファンも返ってきてくれた。プロ野球として成り立つためには、ファン拡大しかないわけですから」

 前「歌もそうです。お客さんに来て頂かないことには始まらない。お客さんがいないとさみしい。聴いてもらえなかったら、歌い手じゃありません。なる必要もないです」

 中「そうです」

 前「中畑さんと僕は生き方が似ている部分ある。僕も歌だけでなく、お客さんをどうして楽しませるか、を考える。実は歌よりも、欽ちゃん(萩本欽一)と一緒にやったコントの方がお客さんが喜ぶのですよ(※70年代後半に『欽ちゃんのドンとやってみよう!』に出演。萩本と“コント54号”を組んだ)」

 中「一時期、どっぷりつかっていた時期ありましたね。見ていて楽しかったですよ」

 前「当時は歌なんかどうでもよかった(笑)。歌をやっていても、ショーで笑わせたい自分がいるのです。お笑いをやってお客さんが喜ばれる。それで、じゃあ1曲歌おうか!と言うと1曲じゃ少ないから。2曲!となるのです。僕もそういう感じに変えたのです」

 中「前川さんのコントはキャラじゃない。イメージじゃない。(コントを)やることはダメージなのです。でもチャンスに変えた」

 前「そうですね」

 中「一気にブレークして。お笑いもこんな面白いのかと。負けた気がした(笑)。でも、そんな考えは、いつごろから生まれたのですか」

 前「欽ちゃんがある時に『キヨシちゃん、レコード売れてる?』って。『売れてません』って答えたら、『だったら、キヨシちゃんの歌は聴きたいとみんな思っていないのよ。キヨシちゃんを見て楽しいと思っているんだから、楽しいことをやれば』と。みんな“前川清さん、面白いよね”と思うのなら、歌い手よりも、面白い方で行ってみよう!と考えた。それで、面白い方に行って、今は完全に歌い手というの、捨てていますからね」

 中「前川さんは、オリジナルの世界を持っています。それがオンリーワンだと思いますよ。だから僕も野球界でもオンリーワンになりたいんです」

 前「中畑さんもオンリーワンです。本当に。でも今、一番心配なのは、今年、中畑さんが監督としてどうなのかな。責任を取らなきゃいけないのかなと」

 中「毎年、そう思っていますよ。でも監督をやらせてもらえるチャンスをもらえたのが、ものすごくうれしかった。自分の人生の中で一度はやってみたいと思っていた。一度でいい。その一度で、思っている監督像を実践して受け入れられるかは自分にとってもチャレンジでした。それが、こんなにうまくはまるとは思っていなかった。マスコミの方のウケもいいし。なんでこんなにいいのと。俺、この時代で、こんなに受け入れてもらえるの。すごい報道してもらって。楽しくて」

 前「見ていてこっちも楽しいですよ。だから、中畑監督は優勝しなくていいのですよ、正直。優勝できたら最高ですよ、ベイスターズが。だけども中畑さんがいるベイスターズは、やっぱり今みたいな形があって…。僕もそうですけど、本職の歌があって、やっぱりお客さんがそれを要望するなら、勝敗に、歌にこだわる必要はない。お客さんが楽しんでくれたらいいんだ!というものが、たぶん中畑さんと僕に似ているところがあるんじゃないかと思うのです」

 中「めちゃくちゃ似ていますね。でも、今年は監督として最終的に結果を出さなきゃいけないなというところに来ている。4年も続けるなんて全然思っていませんでしたから。2年契約の中で途中でクビになるなと思っていたし、2年もやれれば十分だなと思っていた。でも、徐々にいいチームになっていく足跡を自分でも感じるし、今はやりがいがものすごくありますよ」

 前「やっぱり中畑さんにはいてもらいたいですよ。中畑さんなしで優勝するよりも、俺は中畑さんがいて優勝しない方がまだいい」

 中「初めてだろうね。こうして言われる監督って。勝たなくてやってって。そんな虫のいい話ないし(笑)。ただ今年は本当の野球はこうなんだよってことを、何か総決算で残したいなっていう年にしたいんですよ。このチャンスを何とか生かし切って。締めたいなと思っているので。今年はやりますよ」

 前「期待してます。今日はお会いできてうれしかったですよ」

 中「僕もうれしかったです。今回、このWキヨシの企画をもらった時に、すぐに行こうと思った」

 司会「今季は好結果を出してオフにWキヨシ公演やCD発売もできればいいですね」

 中「やりましょう」

 前「ぜひとも!楽しみにしています」

 司「最後に同世代の方にメッセージを」

 前「いい年を取ったねというのがある。僕も歌を46年間やらせてもらって、うまい具合にここまで脱皮してこられた。中畑さんも選手時代があって、今、監督としてユニークな中畑さんがいて。ここまで来られたのは…」

 中「やっぱり出会いでしょう」

 前「そうですね」

 中「人とのいろんな出会いがどこかでつながっている。監督のチャンスをもらえたのも出会い。僕の武器は裸で付き合えたっていうこと。最高にね。ヨーイドンから最初に自分が裸になれる勇気を持てる男だっていうのは自分で自分を褒めたい部分なんです。中畑清はこういう人間なんですよって先に提供しちゃうんです。相手がどう受け入れるか、ダメだったら自分が去っていけばいい。その嗅覚は強いものがある。意外と僕のマネをできる人は少ないですね」

 「そういえば僕が演歌大好きになったキッカケは前川さんの『長崎は今日も雨だった』を中学生の時に初めて聴いてからですよ」

 前「うれしいな」

 カメラマン「監督、マイクを」(手渡す)

 中「お、マイク…前川清、マイクわきよし、前からキヨシ、生まれた時からキヨシ」

 中「♪あなた、ひと~りに~」

 前「♪ワワワワー」(「長崎は今日も雨だった」1番を熱唱)

 ★中畑 清(なかはた・きよし)1954年1月6日、福島県矢吹町出身。駒大から75年ドラフト3位で巨人に入団し、中心打者として活躍。現役時代の名フレーズ「ゼッコーチョー!」は日本全国に浸透した。89年の引退後は評論家に転身。巨人のコーチや04年アテネ五輪代表監督などを歴任し、12年より横浜DeNAの監督。84年には「十和田丸」で歌手デビューしている。

 ★前川 清(まえかわ・きよし)1948年8月19日、長崎県佐世保市出身。68年「内山田洋とクール・ファイブ」に参加し、69年に「長崎は今日も雨だった」でデビュー。「そして、神戸」「中の島ブルース」「東京砂漠」などがヒットした。ソロでは82年の「雪列車」から昨年の「花美~はなび~」まで精力的にシングルをリリース。今年1月には、エルビス・プレスリーなど、少年時代から慣れ親しんだ洋楽をカバーしたアルバム「マイ・フェイバリット・ソングス~オールディーズ」をリリースした。

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