日本在住キエフ出身男性が思い語った「1人が始めた戦争犯罪だ」 早期のロシア軍撤退望む

 子供2人を連れてウクライナとポーランドの国境で許可を待つ男性の妹
 男性の家族らは西ウクライナの親戚宅に移動。アパートの一番安全な場所である廊下で夜を過ごす 
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 ロシアによる対ウクライナ侵略戦争が始まって約1カ月となった。日本で貿易業を営むキエフ出身の男性(41)が匿名を条件にデイリースポーツの取材に応じ、キエフからポーランドに避難した家族のこと、日本にいるロシア人が、ロシアに抗議する日本でのデモに参加したロシア人リストを作成しようとしたことを語った。男性は両国について「同じ音楽を聴いて、同じ映画を見て育った。本来はとても仲がいい」と一日も早くロシアが撤退することを望んだ。

 男性はキエフ出身。2005年に来日し、兵庫県で貿易会社を経営している。母国の状況に「自分の手で何もできない。男性として武器を持ってなんとかしたいが、何もできない。悔しい」と唇をかんだ。

 キエフには母親(65)と妹(30)がいた。ロシアによる攻撃が始まった日、母に電話をした。現地は早朝5時頃だった。男性は「最初にミサイル攻撃された場所を知らせようと電話で母を起こした。母は電話口で泣いた。母が泣く声を聞いてつらかった」。自分の手で母と妹を守ることができないことが苦しかった。

 攻撃から2日目。キエフにもミサイルが着弾した。母たちが暮らす場所から1キロほどの距離だった。次は自分たちかもしれない。母と妹は親戚がいる西ウクライナに向かうことを決めた。その先のポーランドに友人がいる。十数時間かけて車で移動。ポーランドに避難できた。

 男性はSNSや海外メディアを通じてロシア軍の情報を集めた。「最前線に送られている兵士は20歳から22歳くらいの若い人が多い印象。本格的な戦闘経験もなく、訓練程度の経験しかない。そういう人を先に戦場に行かせるなんて。彼らの母親を思うと、ひどい」とロシアの若い兵士とその家族を思った。

 「彼らは『訓練だ』と嘘を言われて戦争に連れてこられた。基本的にウクライナとロシアは仲がいい。言葉も似ていて勉強しなくても70%はお互いに理解できる。(軍の上層部がロシア兵に)嘘をつかなければロシア人はウクライナ人と戦争をしない。たった1人が始めた戦争。何の必要もない。戦争犯罪だ」と語気を強めた。

 実際、ロシアの軍事行動に抗議するデモが大阪で行われた際、ロシア人の参加者もいたという。ただ、ロシア人の中には「参加したロシア人のリストを作って本国に送ろう」と企図した者もいたという。男性は「ロシア人が政権に異を唱えるのはかなりのリスクを伴う。デモに参加したロシア人は帰国時に何らかの処罰があるかもしれない」と危ぶんだ。

 男性は「ウクライナ軍は弱いと思っていた。数日で終わると悲観していた。持ちこたえているのは国際社会による経済制裁が大きい。世界の名だたる企業がロシアから撤退している。ロシアがウクライナを離れるまで続けてほしい」と求めた。

 通常なら男性は毎年夏、子供を連れて帰郷し、家族や友人と1カ月を過ごした。「夏のキエフは涼しく、美しい」。美しいはずの街は爆撃され、人が死に、黒煙が上がる。

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