【永山貞義よもやま話】残念賞&健闘賞の「がむしゃら野球」

 がむしゃら野球が成果を上げた新井カープのCSに期待大
 機動力野球を取り戻し2位と健闘(写真は二盗を決める小園)
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 プロ野球のレギュラーシーズンが先頃、終了した。この機に今年のカープについて感想を述べさせて頂くと、これほど楽しませてもらえたシーズンはなかった。特に終盤での味は絶品。かつて江崎グリコがキャラメルの宣伝でうたった「1粒で2度おいしい」と同様、優勝争い、CS進出争い、2位争いと続いた戦いには、ファンの誰しもがイライラ、ハラハラ、ドキドキの3度の味を堪能させてもらえたことだろう。結果は首位阪神と11・5ゲーム差の2位にとどまったとはいえ、新井貴浩監督が演じた、その「がむしゃら野球」には、「残念賞」を贈ってもよろしかろう。

 こんな「残念賞」の過去をたどると、それに値しそうな例は、2度あった。まずは巨人に6ゲーム差の2位だった1983年。そして巨人に最大11・5ゲームもあった差を大逆転されて3位に終わった96年は、「残念賞」より「無念賞」と言った方がふさわしいかもしれない。この二つの惜しかった過去を検証すれば、今年とやや似通っていたのが83年である。

 まず共通していたのは足。83年は前年、99個だった盗塁数を165盗塁と大幅に増やし、チームの代名詞、「機動力野球」を存分に見せつけた年だった。そして今年は新井監督がその野球を復活させ、昨年の26盗塁から3倍の78盗塁まで引き上げている。

 さらには先発陣が充実していたのも、共通項か。83年は北別府学、山根和夫、川口和久、津田恒美、今年は大瀬良大地、九里亜蓮、床田寛樹、森下暢仁の4本柱が一番の売りの戦力としてスタートした。

 しかし、この柱たちは、総じてエンジンの掛かりが悪く、83年は開幕2戦目から6連敗。今年も開幕戦から4連敗とつまずいた。そこから両年とも徐々に盛り返し、83年は前半戦を終わって首位。今年も球宴を挟んでの10連勝で、一時は首位に躍り出ている。

 こんな進撃を阻んだ大きな要因は、後半戦での主力選手のけがだった。その詳細は次の通り。

 【83年】山本浩二(腰痛)、高橋慶彦(左膝痛)、山崎隆造(右膝痛、左足痛)、津田(右肩痛)

 【今年】西川龍馬(右脇腹痛)、上本崇司(左脚痛)、秋山翔吾(右脚痛)、菊池涼介(左手親指痛)、野間峻祥(左脚痛)

 83年は前半戦、大活躍した山本浩と津田が故障によって、成績が急降下。特に前半戦で9勝した津田が後半戦に投げられなかったのが響いた。これに対して、今年は勝負どころとなった7月中旬から9月に掛けて、主力の野手がこぞって戦線離脱。阪神の快進撃も相まって失速した。

 前半戦を終わって、2位の中日に5ゲーム差をつけ、首位を快走していた96年もそうだった。主なものを挙げると、野村謙二郎(左脚痛)、前田智徳(アキレス腱痛)、江藤智(右目眼てい骨折)。主軸の紀藤真琴は後半戦、右肩に違和感を抱え、ほとんど勝てない状態だった。

 こうして振り返ると、「残念賞」に終わったシーズンの敗因は明らかだが、大きな目で見れば、1年を通して戦うだけの戦力が整っていなかったともいえる。ただ前評判の良かった2度の過去と比較すれば、最下位候補だったはずの今年の躍進には「健闘賞」も贈呈していいのだろう。

 加えて2度の過去と違って、今はCSという制度が設けられている。新井監督の「がむしゃら野球」は長期戦より、こんな短期決戦の方が向いているような気もする。見据えるのは、阪神相手の「ジャイアントキリング」。いわゆる「下克上」に期待である。(元中国新聞記者)

 ◆永山 貞義(ながやま・さだよし)1949年2月、広島県海田町生まれ。広島商-法大と進んだ後、72年、中国新聞社に入社。カープには初優勝した75年夏から30年以上関わり、コラムの「球炎」は通算19年担当。運動部長を経て編集委員。現在は契約社員の囲碁担当で地元大会の観戦記などを書いている。広島商時代の66年、夏の甲子園大会に3番打者として出場。優勝候補に挙げられたが、1回戦で桐生(群馬)に敗れた。カープ監督を務めた故・三村敏之氏は同期。阪神で活躍した山本和行氏は一つ下でエースだった。

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