変身した広島・九里が最多勝 北別府氏「30歳は投球スタイルの変わり時」

 広島の九里亜蓮投手(30)が今季、13勝を記録して阪神・青柳とともに最多勝のタイトルを獲得した。デイリースポーツウェブ評論家の北別府学氏は「力任せの投球から打たせて取る投球に変えてきた」と評価。剛から柔へ、投球スタイルの変化に注目した。

   ◇   ◇

 去年までの九里は追い込んだら三振を取りにいっていたよね。力任せの投球という感じだったけど、今年は顔の表情からもリキみが消えている。打たせて取るという投球スタイルを、意識してできているんじゃないかな。

 その結果、最多勝というタイトルにつながったのだろう。10月29日のヤクルト戦で最後のチャンスをもらい、それをしっかりモノにしたのだから立派。1年間、ローテーションの中心で投げ続けていたし、よく頑張ったと思うよ。

 防御率が昨シーズンの2・96から3・81に悪化しているという指摘もあるが、投手は防御率だけで飯を食っているんじゃないからね。私にも経験がある。防御率に固執せず勝てる投手、勝たせる投手になることが大事なんです。

 九里は今年の9月に30歳になったばかりだけど、この30前後というのは投球スタイルの変わり時なんですよ。だいたい球威が落ち始めるころ。だから新たな変化球を身につけて、進化していく必要があるんです。

 メジャーに挑戦した黒田博樹がいい例だよね。彼は30を過ぎていたけど、直球とフォークだけではメジャーで通用しないと痛感してからは、カットボールやツーシームのような動く球をマスターして大成功した。

 カープの先輩に絶好のお手本がいるのだから、ぜひ参考にしてほしい。速い球で三振を取ると気持ちいいかもしれないが、今の時代、少々速くても簡単に打たれてしまうからね。

 先日、デイリースポーツ紙上で、併殺獲得数の話題を取り上げていたけど、九里は今年1年間で、同僚の森下と同じ12個を記録していた。多いか少ないかは判断が難しいが、青柳や中日の柳も12。阪神の伊藤将が15で目立っていたね。

 (北別府学の併殺獲得数は現役19年で223。年間最多は1985年の22という数字が残っている)

 併殺は取れるに越したことはないよね。1球で2つのアウトが取れるのだから。球数にもイニング数にも影響してくる。長く投げればリリーフ投手を助けることにもなるしね。

 やっぱり打たせて取るタイプに、併殺が記録されやすいのかもしれない。

 ちなみに、北別府流の併殺テクニックをひとつ披露してみたい。

 例えば右打者を打席に迎えた場合、私は内角を意識させる球を何球か投げたあと、外角低めの、やや甘いコースに、速めの球を投げて、セカンドゴロを打たせることをよくやったものです。

 シンは外しながら、やや強めの打球を打ってもらう。もちろん失敗することもあったけど、そうやってコツをつかんでいった覚えがある。

 今は球足の速い人工芝が多い反面、併殺が取りにくくなっているように思う。昔に比べて全体的に足の速い選手が多いからね。少しでもジャッグルするとセーフになる時代だから、一概に昔と比較はできないけどね。

 話を九里に戻しましょう。最終盤での足踏みがなければ、単独で最多勝を獲れていたかもしれない。

 1つでも多く勝ち、チームに貢献し、お金を稼ぐ。それがプロ。これから先、もっともっとどん欲に、勝ち星を積み上げていってほしい。

 今年は自分自身がチームを背負っている。そんな大きな存在になっていると自覚した年になったんじゃないかな。

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