旨い清酒の秘密見た こんぴらさんの御神酒醸造元「西野金陵」

 金刀比羅宮(左奥の山腹)に向かう表参道にある「金陵の郷」
 「限定吸水」で米の吸水具合を見る西野金陵製造課長の酒井史朗さん=金陵多度津工場
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 清酒がおいしくなるカギは?日本酒ファンでも意外と知らないのではないだろうか。答を求めて、こんぴらさんの愛称で親しまれる金刀比羅宮の御神酒を製造している香川県の清酒メーカー西野金陵の酒蔵を訪問、意外な最重要作業の奥義を知ることができた。清酒に合う料理として、香川名物の骨付鳥を味わった。

 ◇   ◇

 酒蔵は785段の石段で有名な金刀比羅宮のふもとから少し行った多度津にある。清酒の蔵元としての金陵は、二百数十年の歴史を持つ。安永8(1779)年に阿波芝生(徳島)で創業し、寛政元(1789)年には琴平(香川)で酒造を始めた。昭和44(1969)年には製造の大部分を現在の多度津に移した。

 酒蔵では、製造責任者の酒井史朗製造課長が出迎えてくれた。伝統ある酒蔵のまとめ役ながら、とても気さくな人だ。

 ずばり、おいしい清酒を生み出すために最も重要な作業をたずねた。答は、米に水を吸わせる「限定吸水」だった。正直、驚いた。周りの日本酒ファンは、だれひとり吸水とは言わなかったからだ。

 酒造りの工程は、まず米を精米して洗米したあと、水を吸わせる。その後、よく知られる麹(こうじ)づくりやもろみ仕込みなどに移る。すべてが大切だが、吸水が適度であれば、良い酒ができるレールが敷かれたとまで言えるそうだ。

 今回は、実際の吸水作業を見ることができた。担当者が、洗米した米をひと抱えはありそうな袋に詰める。その袋をたらいのような水槽につけ、時計をにらんでいる。時々、米を皿にすくって真剣な表情で吸水の具合を見る。精米歩合35%まで削った大吟醸用の米は、秒単位で吸水時間を管理しないと、出来具合に影響する。

 酒井さんは「年ごとの米のでき方によって基本の吸水時間や水と米の温度を決めて、それらを日ごとに調整しています」といい、その日の時間を決める人は「経験、力量、精神力が必要で、周りに何を言われてもブレない人でないとできない」と、技術だけでなく、重圧と闘える心を備えたプロの仕事なのだ。

 こうして生まれた金陵の清酒は金刀比羅宮に向かう表参道にある「金陵の郷」で多くの銘柄が販売されており、試飲もできる。奥にある歴史館では、酒造りに精魂を注いだ人たちの歩みを知ることができる。多度津の工場は一般の見学も受け付けており、日本酒ファンならぜひ訪れてみたい。

 ◆西野金陵多度津工場

 香川県仲多度郡多度津町葛原1880。JR多度津駅からタクシーで10分。酒蔵見学は、酒造りを行っている11~3月、オフシーズンの4~10月とも可能。問い合わせはTEL0877・33・4133。

 ◆金陵の郷

 香川県仲多度郡琴平町623。JR琴平駅から徒歩10分。開館時間は、平日午前9時~午後4時、土日祝は午前9時~午後6時で年中無休。TELフリーダイヤル0120・64・1336。

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