目に見えない結束の心
【8月26日】
佐藤輝明の悪送球を全力で追う大山悠輔の姿から伝わるものがあった。その背中が何を語っていたか。「輝明、何やってんの」ではなかった。
「何とかカバーしたい…」
3番の背中がそう語っているように僕には見えた。
結果的に輝のこのミスが決勝点を献上した。だから余計に、何書いてんの?そんなふうに読者から叱られるかもしれない。が、大事なことなのでとどめておく。初回の守りである。
先発の伊藤将司は先頭福永裕基にヒットを許したが、続く上林誠知をサードへのゴロに打ち取った。ところが、この打球が厄介だった。不規則な回転で、いわば空中イレギュラーのような格好になった。輝が体勢を崩しながら捕球し、そのまま一塁へ投げたが、これがライト側へ大きくそれてしまった。ファウルグラウンドを転々とする白球を背番号3が全力で追いかけたが、一塁走者の福永は一気に先制のホームを駆け抜けた。このとき、大山は森下翔太のカバーリング云々は考えていなかったと思う。とにかく自分が…この全力プレーに伝わるものがあった。
これまでの取材の中で、僕なりにそう感じる根拠がある。
大山は輝の守備練習をずっと見てきた。キャンプもそうだし、シーズン中もずっと。捕球も、送球も、何とかうまくなりたい。切迫感、責任感、向上心…その姿を見ていて染みいるように伝わるものがあったのだろう。大山はかつて僕に言ったことがある。
「輝明の姿を見ていますから…。何とか捕ってあげたいという思いがあるんですよ」
サードでギリギリのプレーになれば送球がショートバウンドになることも、浮くこともそれることもある。無理なものは無理だけど、それでも何とかできるものは何とか。当然、誰からの送球も捕球したいが、輝の懸命な姿勢が大山にそう思わせることも確かだ。
指揮官の藤川球児は試合後、失策についてこんなコメントを残した。
「ミスしようと思ってやっているわけではないし、必ずこういう日はありますから。いかにチーム全体、個々の気持ちをしっかり持って明日に向かうかが問われることじゃないですか」
その通りだし、シーズンの佳境で、とりわけ外野が逐一個のミスをつつくほど詮無いことはない。今更だけど、野球は失敗のスポーツだから。
球児は最近の会見の中で「結束」という言葉を度々発している。
「練習のときから結束力が非常に高く、チームとしてできていますから」
これだけ聞けば、その力がどんなものか分かりづらいが、僕らの目に見えない心の束はたくさんあるはずで、その数で凌駕する組織が最後に笑う。球児はそう信じているのだと思う。
巨人は甲斐拓也の決勝弾で1・5差まで迫ってきた。殊勲の男は言う。
「個人ももちろん大事ですけど、何よりチームが勝つために全力を尽くして準備するだけです」
敵ながら、確かにそうだ。「結束」を争う残り30試合になる。=敬称略=
