いつも心で空を見上げる

 【5月10日】

 きょうは天国の母ちゃんが打たせてくれた。0に抑えられた。そんなふうに書こうか。いや、やめておく。「母の日」じゃなくても打ちたい。守り切りたい。美談は先にとっておく。

 ピンク色の用具に身を包んだ梅野隆太郎が活躍した。守っては3投手を好リード。渋い2本のヒットは気持ちで打った。得点にも絡んだ。

 才木浩人-梅野のバッテリーは5月3日以来だけど、実は、あのゲームを僕は記者席からではなく、スタンドから見ていた。仕事休みで知人から誘われて…。7回降雨コールドで巨人を倒し、チームは3カード連続勝ち越し。才木は2試合連続6失点の乱調から中4日で復活を印象づけた。そして、梅野はといえば、あの日が今シーズン初先発だった。最後は雨に水をさされた格好だけど、見事な仕事ぶりだった。 あの日聞けなかったことも含め、確かめたいことがあったのでクラブハウスへ引き揚げる背番号2を待った。

 この日の配球についてだ。

 才木は立ち上がりから変化球が多かったように見えた。スコアブックを見返しても、例えば、初回は19球中11球が変化球。才木といえばスピン量抜群の速球が主体…ここ数年は勝手にそんなイメージをもって見てしまっているが、前回登板もそのイメージがちょっと薄まっていたような気がした。

 梅野は言う。

 「ああ、なるほど…。でも、最初から変化球を多くしていこうなんて思っていなくて…。色々と考えていることはあるんですけど、打者を見て、そのときの感性も大事にしながら、ここは空振りを取りたいとか、奥行きを出したいとか、ファウルを取りたいからインサイドにスライダーとか、カウント球にフォークを入れたりだとか。ただ、それは全て浩人が応えてくれるという前提のもとに成り立っていることなので…。そうじゃなければ、球数の多い、しんどい試合になるかもしれませんし…。浩人が配球に応えてくれているということが全てだと思います」

 なるほど。今年の才木は「直球の被打率がやや高め」などと言われたりもしたけれど、梅野によれば「きょうに関してはファウルを取りたいところでしっかり取れた。変化球で空振りを取った。まっすぐで見逃しを取った。打たれるとしてもそっちよりもこっちで…とか。相手の心境を変えられたのかなとは思います」と収穫を得ていた。

 言うまでもなく「騙し合い」の要素が強いプロ野球の配球である。DeNAとも、巨人とも、次回戦えば全く異なる姿に変身させるかも?梅野は「また見ておいてください」と言わんばかりの面持ちでクラブハウスへ消えた。

 さて、梅野にとって「母の日」とは…やはり、特別じゃないといえばウソだ。少年時代に母親を病で亡くした。開幕前に当時の話をあらためて聞かせてもらったが、自身をこの世に迎え入れてくれた感謝は何時も忘れずグラウンドに立っている。「母の日に…」とあえて言わないけれど、逆境でも笑顔でいられる理由は、ゲームセットで見上げた空の上にある。=敬称略=

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