「もっと探してみろ…」

 【3月27日】

 開幕戦の取材前に水道橋のCoCo壱番屋で腹ごしらえした。ささみカツカレーにチーズをトッピング。ライス150g、3辛…ボリュームを控え、アクセントは馴染みのデザインで。

 「いつも通りやろう」

 藤川球児は出陣式で選手たちにそう語りかけたという。こちらも…と言いたいところだけど、チョイスは「勝つカレー」。ちいちゃいゲンをかつぐ時点でもはや気負っていたか…。

 カレーを頰張りながら思い出したのは現役時代の球児のエピソードだ。

 チームメートと「ココイチ」へ行けばメニュー表を前にジャンケンする。

 そんな話を聞いたことがあった。

 勝った者が負けた者のライスの量、野菜や卵のトッピング、辛さを決める。そして、勝った者が「なぜ、そのチョイスをしたのか」、根拠を説明するのがルール。遊び感覚ながら、いつ、どこでも勝負事。フィールドを離れても勝負師の顔を崩すことはなかった。

 現役22年間、「24時間、365日、プロ野球選手」。そんなイメージで藤川球児という野球人を見てきた。

 では、チームを預かる立場になればどうか。24年秋から背中を追ってきたが、その印象は「366日」になった感がある。思えば、就任会見で「24時間もしかしたら監督としてやっていくことになる」と語っていた通り、一体いつ気の休まる時間があるのか。そう思うくらい「監督」を担っている。

 この日大阪から東京へ入った球団社長の粟井一夫に聞けば言う。

 「365日間ずっと…ではないにしても僕の見る限り、悠に350日以上は仕事をしている印象があったね…」 2年目の第一歩は勝てなかった。でも、球児の顔は晴れやかに見えた。東京ドームの通路で囲み会見に応じ、ただただ相手24歳のルーキーを称えた。

 「相手が上回ったということです」

 グラウンドにお金は落ちている。プロ野球界ではよくそう言われる。火の玉で無双した全盛期の球児も同じようなことを仲間に伝えたことがあった。

 「もっと探してみろ」。後輩に、また、自分にもそう言い聞かせていた。 当時の巨人戦なら、例えば小笠原道大とのマッチアップでは…

 マウンドから左打席に立つ小笠原の目をずっと見る。セットして、集中力を高める相手がまばたきするまで投げない。対戦を重ねる中で勝機をそんなところに見いだしたこともあった。

 例えば、対A・ラミレスなら…

 右打席で構えた肘の角度、その僅か数センチの違い、一つの仕草を見て、この角度なら「狙いはアウトコース」とジャッジし、勝算を探ったり…。

 研ぎ澄まされた感性はまさにグラウンドにこそ向けられる。監督になっても伝えてきた「準備」。26年のそれは「完璧」と言って東京へ乗り込んだ。

 「毎試合勝ちに行くという気持ちを非常に強く持っていきますから」

 会見の輪を出た球児の目は勝負師そのものに見えた。顔は晴れやかでも、心は…。だって相手は巨人だから。もっと探してみろ。自らにそう言い聞かせる旅が始まった。=敬称略=

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