へッスラ論争をどう見るか

 【3月19日】

 カブス鈴木誠也のケガが「右膝後十字靱帯の軽度の損傷」と診断されたそうだ。WBC準々決勝で二塁へヘッドスライディングした際に負傷し、米国でMRI検査を受けていた。

 誠也は現地メディアに「もうヘッドスライディングは2度としないと誓いました」と語ったという。ヘッスラで膝の後十字靱帯を痛める…素人目には分かりづらいが、セ・リーグ球団の旧知のトレーナーに聞けば「膝から下が反対側に持っていかれる状況で十分ある」という。見ているこちらも「へッスラのリスク」をあらためて知ったわけだが、今年は日本球界で頭から滑るシーンが「増える」と聞く。推察の主は、今春の阪神キャンプで臨時コーチを務めた赤星憲広である。キャンプ中にも書いたが、赤星は「ベースがデカくなった分、手からいけばベースの端っこに逃げられるので」というのだ。

 ただ、足からのスライディングで5年連続盗塁王に輝いたレッドスターは「リスクを考えれば推奨はできない」とも話していた。東北楽天のようにヘッドスライディングを「原則禁止」する球団もある。いうまでもなくケガ防止がその理由で、楽天から現役ドラフトで広島カープに加入した辰見鴻之介は古巣のルールを明かしていた。しかし、その彼が新天地ですぐに解禁し、キャンプ中の対外試合、那覇でのG-C戦で頭から飛んで盗塁。監督の新井貴浩から「実戦映えする」などと称えられた。カープの関係者によれば、辰見は「ベースが大きくなってタッチをよけやすい」と語っていたという。なるほど赤星の言う通り、今年のNPBは頭からいくシーンが多く見られるのかもしれない。

 阪神にヘッドスライディング禁止のルールはない。かつて独立リーグ富山から阪神入りした野原祐也(現球団スタッフ)がへッスラをトレードマークにしていたが、当時のファーム首脳から「禁止された」ことが懐かしい。

 ただ、これは口頭の約束事で球団ルールではなかった。近頃では育成選手の福島圭音が、僕の見る限り、盗塁は100%頭からいく。そのほうが到達が「速い」という彼の判断だろうし、ファーム監督の平田勝男も「やめろ」とは言わない。独立リーガーしかり、ボーダーラインで鎬を削る者しかり、生き残りをかければ自然と気持ちが前面に出ることもよく分かる。

 24年のワールドシリーズで大谷翔平は盗塁の際に左肩を痛めたが、あれは足からのスライディングだった。大谷は日本ハム時代にへッスラが禁じられ、メジャーでもそれに倣って滑り込みは「足から」と決めているが、どのみち、ケガをするときはする。そう感じざるを得ないシーンだった。リスクを減らす意味で「禁止ルール」を敷く球団に異を唱えるつもりはないが、それも野球の一部である以上、全面NGとなれば違和感を抱く僕は古臭いのか。

 この日ファームリーグのオリックス戦で福島は頭から滑って盗塁を決めた。彼のヘッスラ技術は「高い」といわれる。育成3年目。ケガなくのし上がれ…そう願って見ている。=敬称略=

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