「帰ってこない計画」を見守る

 【2月19日】

 阪神タイガースが沖縄のファーム宿舎で「育成会議」を開いた。前回のキャンプ休日、16日のことだ。球団副本部長を座長に、しかるべきスタッフが集まり若虎の育成方針が共有された。

 12年から続く阪神の同会議が2月に開催されるのは恒例であり、特にメディアに公表されることもない。年間を通して1~2カ月に一度行われるものだから、今キャンプのそれを「やりました」と特筆するのも不自然だが、宜野座で大山悠輔の打撃練習を眺めながらふと思い出したことがある。

 9年前の育成会議で飛び出した「ビッグマウンテン計画」のことだ。

 高知安芸で開催された17年2月の同会議はやはり、当時のドラフト1位、大山にまつわる報告事案が中心だったと聞いた。この大器をどう鍛えるか。もっといえば、過つことなく「次代の4番」に育てるための最善は何か…。

 鳴尾浜で開かれた同年3月の会議で当時2軍監督の掛布雅之が「そのネーミング、いいねぇ~」と称えたのが、ファーム管轄の責任トレーナーから発せられた大山育成プロジェクト…題して「ビッグマウンテン-」だった。

 いうまでもなく「大」と「山」をもじったユーモア込みの提言だったが、もちろん中身は真剣そのもの。文字通り「大きく育てたい」という球団の強い意向であえて開幕2軍スタート。約3カ月間、体作りに専念させたのだ。

 トレーニングと食事による緻密な増量計画も組み入れられたため、決して余裕のあるフェーズではなかったし、6月に昇格するまで大山は相当キツい時間を過ごした。それでも、大黒柱になった現在の姿を見れば、あの育成計画が実を結んだことは間違いない。

 さて、気になる今年の育成会議の主題はやはり立石正広…のはずである。会議の中身がリアルタイムで漏らされることはないので知りようがないが、故障明けで具志川キャンプスタートした立石をこの先どんな想定で育てるのか注目すべきところ。間違いなく言えるのは、拙速な実戦デビューはないということ。具志川の屋外でフリー打撃を解禁したばかりの彼だけど、指揮官の藤川球児が明かしたように「徐々に、あげていく」方針は不変だろう。

 大山同様に「大きく育てる」使命を球団は担う。今後も育成会議に出席するファーム監督の平田勝男は立石の現状をこんなふうに言う。

 「いいステップアップをしているので、トレーナーとともに計画を立ててやっていくよ」

 そういえば、9年前。開幕からルーキー大山を預かったファームの育成指針は「帰ってこないように…」だったと聞いた。しっかりと表舞台で戦える体に仕上げ、鳴尾浜へ逆戻りすることがないように1軍へ送り出す。大きく強い選手に…そんな念いを現場とフロントが共有していたことを思い出す。

 立石だってそうだ。「スタンディングストーン計画」…なんてくだらないことを書けば叱られそうだけど、リハビリスタートが功名となるように…ファームに「帰ってこない」計画を楽しみに見守りたい。=敬称略=

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