超人ハルクのように

 糸井SA(左)が見つめる中、打撃練習する百崎=3日
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 【2月4日】

 宜野座からの帰路で琉球の牛に会った。今まさにトラックから降りてくる黒毛にバッタリ。迫力に見惚れ、思わずレンタカーを路肩に…。身元を明かし、牛飼いに話を聞かせてもらった。

 沖縄本島中部、石川の闘牛場で手綱を引くのは小柄な女性。「調教師の糸数桜です」。自己紹介してくれた。彼女が牛場へ導くのは重さ870kgの雄牛。名は「ハルク」というそうだ。

 実は昔、キャンプ中に金本知憲と共にここで闘牛を観戦したことがある。スペインのそれと違い、猛牛対猛牛の決闘。引いたほうが負けだ。アニキが「強いものを見たい」というので大会のスケジュールを調べ、宜野座で練習を終えたその足で闘牛場へ向かった。

 あれから20年ほど。久々にあの興奮を味わいたくなった。

 「私、阪神好きなんですよ」

 桜調教師は虎ネタを聞きたそうだった。が、こちらは猛牛を知りたい…。

 牛はどうすれば強くなるんです?

 「稽古です」

 ああ、やっぱり…。

 この日は試合開催がなく「稽古のために」来たという。なるほど。だから二頭連れているのか。ぶつかり稽古…「相撲と一緒ですよ」なのだとか。

 「ハルクは4歳。連勝牛です」

 若きホープということ?

 「その通り。3月に大きな大会があるのでそこで連勝を伸ばしたい」

 今は決戦に向けたいわばキャンプ期間。猛稽古の日々だという。

 ところでハルク…って?

 「筋肉質なのでそう名付けました。ハルク・ホーガンみたいだから」

 おぉ、超人…。ん?超牛か。 

 さて、こちら宜野座の虎はあっという間に第1クールが終わった。猛虎になるためにはやっぱり稽古…いや、練習あるのみだ。藤川球児が抜擢した若きホープを追った4日間。虎将が指導を託した臨時コーチ、超人がべた褒めしたのは百崎蒼生だった。

 「若いし、しっかりトレーニングする選手ですから。急に伸びたりするような選手なのかなと思いますね」

 鍛え抜いた糸井嘉男の目にも百崎の肉体は逞しく見えるようだ。

 「やっぱり打球が変わってますからね。ルーキーから見ていても」

 宜野座メンバーに選ばれた百崎だけど、彼にとって分岐点は一昨年秋のキャンプ。平田勝男らそう語る指導者は多い。当時、百崎は安芸キャンプのメンバーから外れ、鳴尾浜で一人悔しさを押し殺して泥だらけに…。実は僕もあの秋、さすがに気になって百崎を見に行った。すると、野手担当のファームコーチ全員から付きっきりで指導され、血相を変える19歳の姿があった。

 「高知に行けない悔しさはもちろんあります。誰よりも練習したいです」

 そう話していた百崎が猛稽古を積み2年前から見違えるほどの肉体を手に入れた。この日は初実戦のシート打撃で無安打。快音は響かなかったが、その結果も血肉にする。糸井の激励を糧にいつか超人の後継と呼ばれる日がくるかもしれない。覚醒に挑み、ツノを研ぐ。闘う春だ。=敬称略=

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