新井が羨む大山の成長

 西宮えびすの近所で久しぶりにあの「兄弟」とテーブルを囲んだ。この2人と一緒に…となると、10年ぶりくらいだろうか。かつては広島担当時代からのよしみでしょっちゅう…。

 金本知憲と新井貴浩である。絶妙なかけあいは昔と変わらず、聞いているこちらはほっこりする。話題はカープにまつわるものがほとんどで現場を預かる新井は真顔で金本の経験談に聞き入っていた。とりわけ熱が帯びたのはドラフト戦略。カープが2年連続で大卒野手を1位指名した経緯を鯉将に聞けば「それは僕が球団にお願いしました」と、素直に打ち明けていた。

 なぜ、お願いしたのか。ずばり、阪神の成功例に倣いたいから。そこで新井が名を挙げたのが大山悠輔である。

 「大山を初めて見たのはマツダスタジムだったんですけど、あのとき彼はまだスタメンじゃなかったのでゲーム前のバッティング回りが最後の組だったと思うんですよ。まわりに聞きましたもん。あれが大山?めちゃくちゃいいじゃんって。カネさんが監督をやられていた時代のドラフトからタイガースはいい流れできてますよね」

 大山が1軍デビューしたのは新井が現役晩年だった17年のこと。6月のCT戦、その試合前の光景を「はっきり覚えている」という。

 早いもので、もうあれから9年。初々しかった白鷗大のスラッガーはすっかり虎の枢軸に成長した。

 この日、寒空の尼崎でSGLを覗けば大山がサブグラウンドでノックを受けていた。内野手用のグラブでサード、そしてファーストに就き、基本動作の捕って投げるを反復。ホットコーナーで打球をさばく姿を見れば、それこそルーキー時代が懐かしくもなった。

 新井の言う「いい流れのドラフト」は確かにそうだ。大山を起点にすれば阪神はこの10年間、1位で大卒・社会人の野手を5人獲得している。大山、近本光司、佐藤輝明、森下翔太、立石正広。翻ってカープは18年の小園海斗を最後に、森下暢仁、栗林良吏、黒原拓未、斉藤優汰、常広羽也斗…5年連続で投手を1位指名。新井の懇願で24年に青学大のスラッガー佐々木泰、そして昨秋は仙台大の逸材平川蓮を獲得したが、球団のスタンスとして基本的に「1位=投手」のドラフトが長く続き、大卒野手の1位は14年の野間峻祥(中部学院大)までさかのぼる。

 僕はカープの近年のドラフトが不正解などとは思わないし、もちろん新井もそうは感じていない。巡り合わせや運、縁もある。何より16年からの3連覇はドラフトの賜物であったわけで。今は正の連鎖が明らかに阪神にきているし、その象徴が大山だから、新井のあやかりたい気持ちもよく分かる。

 尼崎からの帰り、西宮神社の「十日えびす」を詣でながらふと目に入ったのは西宮市政100周年の看板だ。そうか…。阪神90周年の昨年はホームタウンも節目だったのか。100周年の標語は「たのしみや、にしのみや」。市民なのに知らずにごめんなさい。

 大山ドラフトから10年。次の10年はたていしや、たのしみや。=敬称略=

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