三流のコーチングとは
【11月17日】
阪神タイガースのドキュメンタリー映画を見に行ってきた。タイトルは…ごめんなさい、ちょっと長いので割愛する。劇場で見ようか、DVDが出るまで待とうか、迷ったけれど…
西宮のTOHOシネマズで税込み2200円払って、約2時間、大スクリーンの迫力を堪能させてもらった。公開中だからネタバレはNGか。いや、印象的なシーンだけなら宣伝になるはず…なんて思いながら書いてみる。
パリッとしたスーツ姿の藤川球児がVシーズンをプレーバックし、数々の名場面を秘蔵映像とともに紹介する。当然、こちらが知り得なかった内部のやりとりもあるからおもしろいわけだけど、その中で個人的に刺さったのは指揮官がルーキー工藤泰成と向き合う場面だ。
開幕1軍を果たしながら4月半ばに出場選手登録を抹消された工藤はそれでも5月に再登録され、交流戦を戦った。しかし甘くない。パ・リーグの洗礼を浴びる格好で6月早々に再びファーム行きを通達されることになった。そこで球児が工藤にかけた言葉は…
「今シーズンはもう会わないと思っている」
取りようによっては絶望感に苛まれる。だって「残り4カ月は昇格させない」と言われたも同然だから。しかし、続きがある。
「きょう、明日、どうすればいいかではなく、ファームで磨き直すというところでやってきてほしい」
映画を見ながらメモったわけではないので一言一句合っているかどうか分からない。でも、そんなニュアンスであったことは間違いない。
低迷期では為せない育成術。いや、球児ならどんな時代でもやるか…。様々巡らせてみたけれど、一貫して本質を突く指導者であることは映画を通しても伝わってくる。
この日、2年目へ向かう藤川阪神が秋季キャンプを打ち上げた。先週安芸へお邪魔して感じた一番のインパクトはやはり「工藤の300球」だった。あの久保田張りの投げ込みは、映画を見た後なら、もっとストーリー性を感じながら拝めたかもしれない。
2番目のインパクトは、囲み会見で球児が語ったこのコメント。
「こっから5年後、10年後にレギュラーになれてる選手って、1名、2名くらいでしょうから。実際は数多くいるような中のたった1名から2名に入らなきゃいけませんから」
これも本質。キャンプ打ち上げの会見で虎番から若手台頭への期待感を問われても、球児からリップサービスの類いは皆目なかったようだ。
「誰でも構いません。力があれば、選手の名前とか顔は全く関係ありませんから」
プロは力。興味はそれだけ。
映画の中で工藤へ語った前述の言葉、その意味を問われた球児はこんなふうに語っていた。
「僕にとっての一流のコーチングというのはそこです。三流のコーチングというのは優しさなんです。今そこを追求しているところ」-。=敬称略=
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