最後まで当たった23年

 【12月1日】

 監督の言うことは全て当たる。

作戦も代打も全て…。昨年の秋、大山悠輔は古株のチーム関係者からそんなふうに教えられた。しかし、岡田彰布の「慧眼」を知らない者は誰しも半信半疑に…。

 日本シリーズを制した夜、当欄でそんな話を書いた。カントクにまつわる噂話はガチだと大山が信じたのは一年前の安芸キャンプ-。詳細は半月前に書いたので省くけれど、果たして、この日の栄誉は岡田本人も「当たる」とは予期していなかったものである。

 年末の風物詩ともいえる「現代用語の基礎知識選 2023ユーキャン新語・流行語大賞」が発表され、「アレ(A.R.E.)」が年間大賞に選ばれた。思えば、昨年は「村神様」。一昨年は「リアル二刀流/ショータイム」が大賞に輝いたが、これらは当事者ではなく、いわば周囲が原案者。そういう意味では「岡田語」そのもののあれこそがあれでは?

 阪神タイガース界隈-阪神ファン-プロ野球ファン-他競技のアスリート-勝負師たちへと伝播し「アレ=優勝」として、猛虎の快進撃とともに世間に浸透。まさに23年の年間大賞としてふさわしい「大当たり」になったわけだ。

 もはやこわくなるほどの岡田の洞察力である。チーム内に限ればその象徴として中野拓夢のセカンドコンバートが称えられるが、細かいものまで挙げればキリがないほど当たっている。「四球はヒット1本と同じ」と言い続ける指揮官が選球の「査定ポイント」アップを球団に掛け合い、フロントの了承を取り付けたことももちろん「当たり」だったし…。

 なんでも、関西発信の流行語年間大賞は、僕がデイリーに入社した95年の「がんばろうKOBE」以来なんだとか。いま言われても響くコトバ…。というか、その年数を思えば、僕も新聞業界で大ベテランの域になってしまった。

 この日、SNSで「風さんは、岡田監督の手腕のどこを一番評価されますか?」という質問をいただいた。いやいや、ベテランとはいえ、そんな上から「評価」したら叱られる。でも…あえて、この一年を総括させてもらうと、僕がカントクの「見る目」で最も素晴らしいと感じたのは、大山悠輔を4番に決めたこと…それ以上に、大山を4番に決めた理由と、それを世間に発信したことである。

 「練習の姿とかを見ててな。やっぱりみんなが認めんとあかんからな。4番というのはな」「言葉とかそんなんじゃないからな。引っ張っていくとかじゃなしに。みんなが見ている姿勢を見て、やっぱり大山かなあというのはキャンプで見えたよな」

 一番大きいの打つヤツが4番やろ-ではない。練習の姿。みんなが見ている姿勢。プロアマ問わずこれらを根拠に(主将ではなく)4番を決める指揮官って、僕の取材の限り、実はあまりいない。岡田彰布ならではの「目」だと敬服するし、またそれが「当たった」ことも流石。これこそ当欄が選ぶ「岡田の慧眼」大賞として拍手を送りたい。=敬称略=

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