ダルビッシュの本望
【3月23日】
強いチームとは、どんなチームですか?神戸の小学校で講演した10年ほど前、野球少年から質問されたことがある。当時はうまく返せなかったが、今なら少しはまともに答えられるかもしれない。
侍ジャパンは、なぜ強かったのか。ニッポンの強さは、選手たちの中に絶対的な支柱が存在し、その支柱が監督と強固な信頼関係を築いていたからである。
そんな当たり前のこと…って思われるかもしれないが、それって実は稀少だったりする。
ふだん取材するセ・リーグでいえば、近年ならヤクルトには投打の支柱・青木宣親と石川雅規がいる。村上宗隆をはじめ若い選手が青木を心酔し、監督の高津臣吾もまた彼と信頼関係を築いている。こういうチームは強い。
大谷翔平を中心に勝ち続けたWBCだけど、侍ジャパンの支柱は疑いようもなくダルビッシュ有だった。彼の発言や振る舞いに敬意をもたない侍は、誰一人としていない。そういうリーダーがいれば監督と選手たちの意思疎通はスムーズだし、リーダーが「監督を胴上げしたい」といえば、チームの空気も自然とそうなる。
WBCで世界一を経験した青木がヤクルトでそうだったように、中野拓夢、湯浅京己はきっと、かけがえのない経験、そして、ダルビッシュのイズムをチームに還元すると思う。彼ら23年の世界一メンバーが将来的に阪神の支柱になることを期待してやまない。
どんなチームにも色があるが、ニッポンの色を作っていたのは、MLBで10余年研さんを積んだ36歳。今回、個人的にダルビッシュの凄みを感じたのは、彼が目標を「優勝」に置いただけでなく「こんなチームで世界一になる」との大願をチームで共有したこと。
「楽しく野球をしているというところをファンの方に見てもらうことがすごく大事だと思っていたので、それプラス、結果がついてきてすごく良かったと思います」
歓喜に沸いたマイアミでダルビッシュはそう語っていたけれど、このコメントは深読みしたい。
ダルビッシュは栗山をリスペクトし、両者は忌憚なく意見を言い合える関係だと耳にした。
「栗山監督は、選手を傷つけたり恥をさらすようなことは言わない」と語っていたダルビッシュだが、これは、プロ野球はもちろんジュニア世代、高校野球を含む野球界全体への警鐘ではないか。
昔ながらの練習をすべて否定するわけじゃない。ただ、未だはびこる楽しさを排除するような体質がチーム内に分断を生む報を聞けば、胸を痛める侍のリーダーだ。競技する人、見る人、皆に感じてもらいたいこと、それは「野球を楽しんでほしい」-である。
ダルビッシュがSNSでチームメートとの食事など、仲間との結束をファンと共有したこの一カ月間。野球を心から楽しんだ結果が世界一ならば、発信は説得力を帯びる。夢を叶えたダルビッシュはだからこそ「すごく良かった」と笑みを浮かべた。僕の目にはそう映る。=敬称略=
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