晋太郎の美学を読んだ

 【1月14日】

 年末の大掃除で一番厄介なものが書物の類だった。部屋をスッキリさせたいので、不要なものはドンドン捨てる。でも、本や雑誌は「これはいつかまた読むだろう」と、なかなか思い切れない。

 特集 阪神タイガース八十周年

 猛虎、神撃。

 本棚からそんな表紙の雑誌が出てきた。

 Sports Graphic Number。取っておいて良かった一冊である。

 裏面を見れば、平成27年9月発行と印字されている。

 吉田義男、掛布雅之、岡田彰布が腕を組んでポーズを決める写真が表紙を飾る。2015年の秋に書店に並んだものだ。

 8年前の阪神タイガースといえば、和田豊政権の4年目で、成績は70勝71敗2分けの3位。3年連続Aクラスながら、和田は同年限りでチームを去ることに…。球団創設80周年の節目はそんなシーズンになったけれど、Numberがこの特集号で「吉田-掛布-岡田」対談(6ページ)の次に大きく扱ったのが、高卒3年目、藤浪晋太郎(5ページ)だった。

 この年の藤浪は、8月半ばに3年連続2ケタ勝利を記録し、9月半ばにはシーズン200奪三振を達成。オフに1億7000万(推定)で契約を更改した。入団4年目の選手としては、球団史上最高額。これからどこまで上ってゆくのか。早いうちにメジャーへ行ってしまうのか。そんな期待を一身に背負ったプラチナ右腕だから、そりゃ一流誌も食いつく。

 あれから8年が経ち、藤浪は阪神を離れ海を渡ることになった。

 ルーキーイヤーの13年から順風満帆だった3年間を思えば、あのときの僕の想像とは軌道の異なるキャリアを歩んだ彼だけど、それでも、請われてメジャーへいくのだから、プラチナはやはりプラチナだったということである。

 移籍先はアスレチックス。虎党の関心は、やはり、同じア・リーグ西地区に属するエンゼルス大谷翔平とのマッチアップか。

 「なんでしょうね…能力でいったら160キロのストレートは投げられませんし、あんなに防御率がいいわけでもない。ピッチャーとしての能力はかなり劣っていると思うんですけど、でも、先発投手としてイニング数を投げるとか、ローテーションを毎週崩さずに守るということに関しては、きっちりできているのかなと思います」

 15年のNumberで「大谷との違い」を問われた藤浪は、そんなふうに答えている。当時、自らのストロングを明確に語っていたわけだけど、あの矜持は、実は今も変わっていないように思う。

 昨シーズンのア軍は102敗を喫し、ア・リーグ西地区最下位。投打とも陣容は厳しいし、先発陣は明らかな駒不足だけに、藤浪が自信のあるポジションで大谷と投げ合う日は意外と早くおとずれるかもしれない。

 「ピッチングの美学は勝つことだと思っているので」(同誌)

 藤浪の負けん気が恋しくなる一年になればいい。=敬称略=

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