楽しくてしょうがない
【7月20日】
マニー・マチャドの打球が二遊間へ飛ぶと、二塁手アンドレス・ヒメネスが逆シングルで捕球。背中越しにバックトスし、これを受けた遊撃手ティム・アンダーソンが一塁に送球。併殺が完成した。
これぞメジャー!と唸るスーパープレーだった。大谷翔平の初安打に沸いたMLBオールスター、その初回の一幕である。
「ああいうプレーって、やっているほうも、見ているほうも、楽しくてしょうがないですよね」
NHKの放送席に座っていた侍ジャパン監督の栗山英樹はそんなふうに語っていた。
仰る通り。
打撃戦を観るのもワクワクするけれど、華麗な守備を観るのも楽しくてしょうがない。
ひとそれぞれ野球観は違うし、現場とこちらの見方も違うので、どっちがどうと書くつもりはないけれど、あんな美技を楽しそうにやっちゃうメジャーリーガーってやっぱり魅力的に映る。
七回1死満塁、羽月隆太郎の打球が二遊間へ飛ぶと、二塁手の小幡竜平が飛び込んで捕球。倒れ込んだままグラブトスし、これを受けた遊撃手の中野拓夢が一塁へ送球…。
こちらNPBのスーパープレーである。
惜しくも併殺ならず同点を許した阪神だけど、抜けていれば二塁走者の生還も許し、もう1失点。メジャーばりの美技に唸った。
しかし、結局この回逆転を許したのは2つのエラーがらみ。サンテレビの放送席に座っていた福本豊が珍しく声を荒げた。
「このミスはあきませんよ」
福本とは現場で会えばよく話をさせてもらうけれど、いつも選手目線。ご存じ昭和のレジェンドながら、今の野球、今の選手に理解があるOBだと思う。だから怒りをマイクに乗せたこの夜も「やってしまった本人が一番分かっとるから」と、放送席を離れればそう語るはずだ。
そんな福本は外野手でありながら、いつも内野守備にもうるさい人(僕調べ)。それはきっと、自身が走者として塁を奪う仕事をしていたから。こんな内野手やったらイヤや…そんな視点である。
逆転負けは歯がゆいけれど、福本が褒めていたプレーに触れる。
この夜、阪神の二遊間が奪った2つの併殺である。最初は初回、秋山翔吾の二ゴロをさばいた小幡から中野、そして一塁へ。そして2度目は四回、再び秋山翔吾の打球…難しいバウンドに見えたが、これもしっかり捕球した小幡から中野、そして一塁へ…。これで阪神が今季チームで奪った併殺は83個目。この数字は、セ・リーグではヤクルト(89)、巨人(86)に次ぐ数字である。
ちなみに、昨年のそれが(1)DeNA=148(2)ヤクルト=131(3)中日=116(4)広島=110(5)巨人=107(6)阪神=104…という順だったことを思えば、前を向ける数字ではないか。取れる併殺を確実に取る。この地道な積み重ねがあれば、阪神の野球を楽しむ機会は増えてゆく。=敬称略=