村上が心酔する理由

 【2月24日】

 ヤクルトの広報さんに「そろそろ」とストップをかけられるか…それほど時間をかけて話してくれた。青木宣親である。日本チャンピオンのフラッグがはためく浦添で王者の強みを見た気がする。

 若手に惜しみなく指導するメリットを聞けば、青木は言った。

 「ヤクルトが強くならなきゃいけないから」

 強くなる?昨シーズン日本一になったじゃない?まだ強くないのか。そのあたり、取材者とは見据える目的地が違う。青木は「まだまだ」だと感じているから「強くならなきゃ」と繰り返すのだ。

 フォア・ザ・チーム?

 そう問えば、不惑の男は…

 「当然、そうそう。(教える)メリットといわれると、そこですよね。フォア・ザ・チームの精神かな。いまの自分の立場がそうさせているんだと思う」

 キャンプ前の自主トレで今年は「弟子入り」を断った。そこはもう、チームを牽引する野手最年長の責任感である。「教えてください」「一緒にやらせてもらえませんか」。多くの若手から合同自主トレを懇願されたが、断腸の思いで「そこは分かってくれ」と。

 「やっぱり、どうしても密になってしまうから…。たまたま時間が重なれば一緒にやったりはしていましたけどね」

 今年は感染対策として都内を出ず、神宮で自主トレをやった。リスクを甘く見ない。まぁいいかの油断がチームに迷惑をかける。そんな思慮深さもまた、結果として若手のお手本になり、また、チーム力に繋がっていると感じる。

 球界を見渡しても、年長者であれ、これって実はなかなかできないこと。僕との長話もマスクをして距離をとったうえで…広報さんからも一任される所以だ。 

 では、本題。自主トレ、キャンプ、そしてシーズン中も若手に伝えてきた。ヤクルトが強くなるために教える、その中身は?

 「基本的には、取り組み方ですよね」

 若い選手は、当然、ヒットメーカーの技術も聞きたいはずだ。

 「技術も言いますよ。でも、あれこれいっぱい言わない。取り組み方が大事なので。そっちです。取り組み方がちゃんとしていないと伸びるわけないし、そこを教えているだけで…基本的にはそう。例えば、なぜ故障したのか。そこにいたる準備がきちんとできていたのか、いなかったのか、とか。ほとんどの選手に、そこは共通して言えることですからね」

 こういうふうに打つ-以上に、こういうふうにやる-を伝える。

 聞いていて、思った。

 こんな支柱がいれば、監督は楽だろうなと。チーム内を取材すれば、青木の求心力は半端ない。昨季ホームラン王の村上宗隆も心酔しているし、若手は一様にリスペクトしている、野手では青木の次に山田哲人という柱がいて、その精神を継承していくのだろう。

 ヤクルトはまだ強くなる。きっとラストイヤーの矢野阪神に立ちはだかる壁になる。浦添へ来て見て話してそう感じる。=敬称略=

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