プロ野球の厳しさを
【2月20日】
「うぁぁぁぁ!くそっ…」
昨シーズンのセ投手2冠王が絶叫して悔しがった。中日、右のエース柳裕也である。彼は「きょうの対戦で一番燃えました」と、登板後も悔しさを隠さなかった。
宜野座行きのバスを北谷で見送った。この日、朝のことだ。
「おう!風。お前、きょうは阪神戦に行かないのか?」
立浪竜のバッテリーコーチ西山秀二からツッコミが入った。
中日のキャンプ地で見たかったもの…それは、阪神戦に出場しなかった福留孝介の現在地である。お世話になる中日スポーツの先輩に聞けば、どうやら44歳が「開幕投手候補」のシート打撃登板に対峙するという。宜野座で虎竜の練習試合が始まる少し前、観客10余人のアグレスタジアム北谷で福留対柳の真剣勝負が行われていた。
1打席目=右前打、2打席目=見逃し三振で迎えた3打席目。柳が2-2から投げ込んだ外寄り渾身の1球を福留はライナーでセンターへはじき返した。
抑えれば右拳を握り、打たれれば打球方向を振り返りもせず…柳の本気度が伝わる対戦だった。
「落ち込め!落ち込め!もうちょい練習してこいよ!」
3打数2安打の結果に子どものようにバンザイした背番号9は愛情たっぷりゲキを飛ばしていた。
柳といえば昨季、防御率、最多奪三振のタイトルを獲得。阪神戦は4試合に投げ、対戦防御率1・44…苦労させられた右腕である。
お元気そうで。
練習後に声を掛けると、福留は「プロ野球の厳しさを教えてやりましたよ」と笑った。プロ野球の厳しさ-。今年45歳を迎える球界最年長だから、確かに、現役選手でそれを最も知る男といえる。
キャンプ前は沖縄本島で一人で自主トレに励んでいたという。ド直球で確かめたかったのは、「今年もやれるのか」ということ。少し時間をもらって聞いてみた。
20代、30代、40代…やっぱり、カラダの反応は違ってきている?
「違います。(自主トレでは)特に足回りというのは気をつかって注意を払って…というふうにしていたけど、注意を払い過ぎても仕方ないし、シーズンに入ればそんなこと言っている場合じゃないこともあるので、そうなったときに対応できるように、ある程度やるところはやるという感じで…」
つまり、ときに制限を設けず追い込んできたということ。では、もうひとつ。これも直球で。
先を考えるか?
「考えない。そんなことを考えていたらやってられないし、僕の年齢で先を見たって先なんて知れているし、その場その場で結果を残さないといけない立場だから」
代打が主だった昨季は通算42安打ながら殊勲打が多く、決勝打は5度。阪神も9月末にR・スアレスが同点打を浴びた記憶が鮮明に残る。あそこで逃げ切っていれば…つまり、福留が虎の悲願を…いや、何でもない。あまり「プロ野球の厳しさ」を教わりたくないけれど、まだまだ元気でいてほしい気持ちはかわりなく。=敬称略=
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