なんで知っとるん?
【1月18日】
人は口が軽い。おもしろいもので大概のことは「黙ってて」と頼んでも誰かに伝わる。読者の方も経験があると思う。だからホントにシャレにならないことは「黙っててね」では済まないのだ。
年末にサイン伝達のハナシを書いた。それはもう、あちこちから連絡をいただいた。一番多かったのは東西放送各局の方々。「こんなふうに聞いている」「あれはこういうことらしい」などなど。皆さん色んな情報をもってらっしゃるし、色んな思い、考えがあることも分かった。ほかに選手もOBもスタッフも…もっといえば、週刊誌の方からも連絡があった。様々な角度からうかがって感じることを書けば、例の件について、仮にどこぞのチーム内で球界でタブーとされている〈不正〉があるとすれば、そんなものは必ず広まるということだ。
球界はせまい。あまた交流もある。そして、人は口が…である。
もし、いま広まらなくとも、いずれ広まる。「実はあのときのあれは…」。時が経てば、人の口はもっと軽やかになる…そんなのは誰しもが分かる。プロ野球すべての球団の選手、スタッフはそれを心得ているはずなので、ヘタなことができるわけない。当欄の結論として、そう書いておく。年末に続きは今度-と予告したので。
さて、この流れで書くと誤解を招くかもだけど、そのハナシとは全く別もので…デイリー読者の方で心配する方がいらっしゃる。
近年は他球団の選手同士が一緒に自主トレをしていますが、情報漏れとか大丈夫なんですか?
なるほど…。
これは、結論からいえば、「大丈夫です」と書く。それを断定できる立場にないが、じゃ仮にA球団の選手がB球団の選手へA球団の内部情報をペラペラ喋ったところで、そんな背信行為は当該選手にとって何のメリットにもならないからだ。「メシを食う」とはそういうことだと僕は思っている。
じゃ、新聞社はどうか。仮に、情報を他社へ漏らす背信行為があればどうなるか。コンプラどころじゃない。それこそ、そういうことは時が経てば広まるもので…。
「これ、誰からの情報なん?」
監督時代の金本知憲から聞かれたことがある。
シーズン中、東京遠征の際に監督、コーチ、幹部をまじえた阪神球団の食事会が開催された記事を掲載した、その翌日のことだ。
チーム内部の情報を取材したものだから、金本からすれば「なんで知っとるん?」と…。だから、こんなふうに返事した。
「僕がここで誰々から聞きましたと喋れば、まず監督が僕のこと信頼できなくなりますよね。こいつは口が軽いやつやな、と。だから言いません」。そう言えば、金本は「そうか」と笑っていた。
このとき掲載したのは「会食した」という事実だけで、取材対象者も核心は「言えない」と話していた。あれ以降、どれだけ時を経てもこちらは口外しない。口の軽い人間は、僕自身、一番信頼できないもので。=敬称略=