12月2日の訓示を

 【12月15日】

 阪神の球団副社長は毎朝、日経新聞と読売新聞を読んでいる。西宮の球団事務所に各紙閉じてあるので、スポーツ紙は全紙…もちろんデイリースポーツも読んでもらっているし、当欄も毎朝…。

 谷本修である。

 7~8紙に何がどんな論調で掲載されてあるのか目を通す。経営上、運営上のルーティンとはいえ5~10分で済む作業ではないのでなかなかの労力だと察する。

 日経=28行。読売=31行。

 この日、谷本が読む一般両紙が阪神記事に割いたスペースだ。中身は、佐藤輝明、中野拓夢、伊藤将司の契約更改交渉について。日経読者の僕にいわせれば破格の扱いだけど、それは彼らが全国的に注目された証しである。

 きのうは、日経が紙面を割くような、野球を知らない人にも名を売る選手になってほしいと書いたが、谷本も同じ想いではないか。

 今月2日、球団施設で行われた「1年目選手研修会」において、谷本は冒頭の挨拶に立った。例年なら、新人に向けもっと早い段階で訓示する予定が、コロナ禍で12月までずれこんだ。同研修会ではほかに球団各部署の幹部、兵庫県警、飲料メーカー幹部の教示があったが、TA(テクニカルアドバイザー)和田豊の講話は予定時間の倍ほど熱を帯びたという。佐藤輝、中野、伊藤将ら2年目へ向かう精鋭たちは、どんな視点で、どんな感情で、聞いただろうか。

 1年で終わりじゃない。3年、5年、10年、第一線で戦える選手になるには、どう歩めばいいか。自分がどうなりたいか-である。

 年々、選手育成のサポート体制を整える阪神球団だが、取材の限り、強化概念としてまだまだ整わないものもある。球団幹部はそれをしっかり把握しており、必要とみれば、時に鬼にもなる。

 あるとき、期待される選手の強化メニューが滞っていたことがああった。旧知の球団関係者によれば。それを知った谷本は担当者を呼び、事情を聴取したという。管理体制、いや認識が杜撰…責任転嫁も見えたため、叱責した。

 「チーム全体の風土の問題があります」。谷本は僕にそう語ったことがあった。

 阪神球団は1月1日付けで人事異動がある。内示は既に行われているようだけど、今回も人はそこそこ動く。コロナ禍において行動が制限された21年だけど、できる限り感染対策した上で、僕はなるべく人と会い、人と話をするようにしてきた。取材で感じること。それは阪神が変わってきたということ。もちろん、良いふうに。しかし、あえて書けば。改善の余地は少なくない。エラそうにそのひとつを書かせてもらうなら「人」にいきつく。

 肝心なところで逃げる。責任の所在を曖昧にする。押しつけ合う…もし、そんな悪しき〈風土〉が混在すれば、また時代が戻ってしまう。完全なんてあり得ないけれど、いつも希望の光が差す「チーム」であってほしい。谷本は今も「超変革」を忘れていない。=敬称略=

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