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「言いにくくない」環境

 【6月10日】

 新幹線の運転士が運転中トイレに立った問題で、JR東海社長の金子慎が定例会見で見解を語っていた。「(運転士が)勝手なことをしたのが一番の問題」とのことだが、ゾッとする話である。

 この運転士は「熱海-三島」間で腹痛に耐えられず、運転席からおよそ25m離れた1号車後方のトイレで用を足したという。その約3分間の間、運転席を車掌に託したというが、この車掌に免許はなく、その間はいわば無免許運転。時速約150キロで走行し、乗客は160人だったという。

 「プロとして、こんなことで列車を止めるのが恥ずかしい」。事情を問われた運転士はそう語ったそうだが、僕が気になったのは、「言いにくかった…」というもう一つの理由である。二度とあってはならないことだけど、もし「言いにくかった」が一番の理由であったならば、この議論を職場環境へ向けなければならない。

 年に一度の札幌の夜に何を書いとんねん?そうそう、ここからが本題。このニュースを聞いて、プロ野球の現場でもあるんだよな…と、ふと感じたのだ。

 「言いにくい」-。

 僕の知る限り、時にどの球団のベンチにも流れる空気である。

 俺はこう思う。でも監督はどうだろう。ここで意見言っちゃ、まずいか…コーチングスタッフで例えれば、そんな類だ。

 先日、雑誌Number編集部から「星野阪神」時代の原稿依頼があった。18年前の記憶を辿ってみたのだが、あのとき星野仙一が幸運だったのは、腹心が傍らにいたこと。その人、ヘッドコーチ島野育夫もそりゃ、思ったことをすべて言っていたわけではない。それでも誰もが「言いにくかった」ことをここぞでぶつける、闘将との絶妙な関係性がV独走の後押しになったことは間違いない。

 矢野阪神はどうか。

 矢野野球も腹心がキーマンになっているように思う。その人、ヘッドコーチ井上一樹と矢野があうんの呼吸でマネジメントしているように映るが、どうだろう。

 この政権において用兵の肝は、助っ人8選手のやりくりである。 今回の札幌遠征ではDHの起用法が絶妙だった。初戦、2戦目とJ・サンズをDHに置き、この夜はJ・マルテをDH、サンズに来日初の一塁守備を任せた。開幕から踏ん張る両助っ人に疲れが溜まる頃とみて、井上が矢野に具申したのか。彼らの守備負担を軽減する狙いに見えたが、そのあたりは矢野に真意を聞いてみたい。

 強い軍ほど用兵は冴えるものでこの夜はサンズが攻守でキーになった。チーム初安打に初盗塁、そして一塁で美技…終盤に貴重な追加点もたたき出す大活躍である。

 現在、サンズとエドワーズ以外の助っ人は皆単身赴任だという。

球団幹部によればコーチ陣の助っ人勢に対するメンタルケア、体調管理は行き届いているのだとか。だからこそ、矢野への具申もスムーズであり、「言いにくくない」風通しの良い職場環境が強虎を支えているのかも。=敬称略=

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