「圭佑より凌介」の所沢

 【5月28日】

 圭佑より凌介でしょ。あの日、西武ドームでそう言いながら原稿を書いた覚えがある。この夜はどうだろう。拓実より拓夢でしょ。そんなふうに呟きながら執筆した虎番はいたか。いないか…。

 サッカーW杯アジア2次予選・ミャンマー戦で南野拓実が本田圭佑以来となる、史上2人目のW杯予選6戦連続ゴールを決めた。そして、大迫勇也が圧巻5ゴール。在京各紙は最終予選進出を決めた森保ジャパンを派手に扱うのか。

 デイリースポーツは、もちろん虎である。大迫も南野も素晴らしいけれど、南野より中野のタイムリーだし、ハンパないといえば、大迫の5発より佐藤輝明の3発に決まっている。

 冒頭の「凌介」といえば…この球場へ来てその名を出せば、虎党はピンとくるはずだ。あれは14年6月だから、もう7年前。所沢の西武戦で必ず思い出すのが、あのセンター右への素晴らしい弾道。

 当時プロ2年目、23歳の新星、緒方凌介である。

 あの日はサッカー日本代表がブラジルW杯の初戦を戦い、本田圭佑が先制ゴールを決めた。在京他紙は本田で1面を作ったけれど、デイリーは西武ドーム(当時)で決勝3ランを含む4打点と大暴れした緒方を1面でいった。圭佑より凌介だったわけだ。

 あの緒方の1発を回想していると、輝がドカン、ドカン、ドカンである。いやはや、ハンパない。

 プロ野球中継を見れば、ベンチ裏のリポーターから試合中に選手のコメントが伝わってくる。僕ら記者にも球団広報がメール配信してくれるのだけど、猛攻の試合は着信音が鳴りまくる。輝が打ち、中野拓夢が打って、サンズが打ちまた輝が打つ…戦況を見守りながら、選手にコメントを聞いて回る広報も忙しくなる。

 13安打8得点…緒方がかっ飛ばした7年前の西武戦もタイガースの広報は忙しかったはずだ。

 故障も重なり18年限りで現役を退いた緒方はその後、球団広報として縁の下でチームを支え、メディア対応を担う。この夜、一塁ベンチ裏で逆転劇を見守った緒方は試合後、輝をヒーローインタビューへ先導していた。

 「あくまで僕の見解なので、それが正解かどうか分からないですけど、左膝の使い方が凄く上手いなと思いながら見ています。(ボールを)抜かれても左膝の使い方が上手なので拾いますし、天性のパワーがあるので、その拾った打球をスタンドまで持っていきますしね…。あくまで僕がテルを見て凄いなと思うところですが…」

 いつだったか、緒方に輝の凄みを聞いたら、そんなふうに答えてくれた。泳ぎながらフォークを拾ったこの夜の1発目を見ながら、ふと「緒方解説」を思い出した。

 「見ていて、怪物だな…と思うようなバッティングが多いです」

 かつて金本知憲が「直すところがない」と絶賛した打撃の持ち主緒方が見惚れる輝の打撃。ベンチ裏から3本の弾道を眺めた緒方にまたいつかこの夜の伝説を解説してもらいたい。=敬称略=

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