ずっと居ました?

 【2月28日】

 大久保ガーを横目に球場へ向かった。ここでは大久保を「うふくぼ」と読む。宜野座福地川の坂路沿いにあるそんな名の水場を眺めふと思い出した。「大久保」って沖縄にない名だったよな…。

 先日、当欄でプロ野球選手の姓のハナシを書いた。その際に調べてみると、「大久保」は沖縄を除く日本各地で見られるとあった。

 読み方は違えど、この村には大久保なる地名があるんだ…なんて考えながら、コンビニで新聞を買って宜野座のスタンドへ…。

 大久保、おかえり弾!

 各紙そんな見出しが派手におどっていた。福岡出身の大久保嘉人は38歳。古巣C大阪へ復帰し、27日の開幕戦で先制ゴールを挙げた元サッカー日本代表である。大久保のヒーロー記事を読みながら、サッカー担当時代を思い出した。

 僕が大久保に初めて挨拶したのはヴィッセル神戸時代。やんちゃで、けんかっ早いイメージがあったので、そのギャップに驚いた。

 「デイリーさんなんですね…。お世話になってます。何でも聞いて下さい。チームのことでも、何でも…僕、ここの指導者なんで」

 もちろん、ジョーク。新米担当を和ませようとしてくれた気遣いだと思う。その後も恐縮するほど真摯に丁寧に取材に対応してくれた大久保は当時29歳。まだまだ代表を視野に入れる元気盛りなFWだったけれど、そのときからはっきりと感じた。彼のように分け隔てなく周囲を気遣い、チーム内で信望厚い選手こそ、ホントに指導者向きなんだろうなぁ…と。

 「あれ…。風さん、こんにちは!ずっと、居ましたっけ?また、落ち着いたらいきましょうね」

 宜野座のスタンドにいると、阪神打撃コーチ新井良太がグラウンドから挨拶してくれた。2月の末日まで気付かれない僕の地味なこと…それはさておき、この良太コーチにこそ昔から感じていた。

 指導者向きな男だな…。

 理由は、人一倍の気遣いと、人に向き合う熱量である。こちらも人間だから、選手や、球団の人間を「見る」。良太は良い指導者になる…僕は記者の目でそう思っていたし、取材の限り、矢野燿大も金本知憲も、球団本部長の谷本修もそう踏んでいたと聞く。

 今季の阪神は事実上、打撃コーチ3人制である。ヘッドコーチの井上一樹を軸に、北川博敏、そして新井良太。では、この中で最年少である良太の役割とは何か。

 昨年、コロナ禍の前に彼とこんな話をしたことがあった。

 「大山ですか??いや、それはもう、いい打者にしたいですよ。タイプ的に、悠輔を何とかすることが、僕の大きな仕事ですし」

 当然の責任感であり、その責務が大山の数字に表れていることがなおさら嬉しい。

 大山悠輔が実戦復帰した日に良太の話を書きたかった。指南以上に、忍耐強く寄り添えるコーチ…矢野が理想に掲げる指導者像にハマる。昨年、いやそれ以上に成果が伴えばと願う。新井良太の任務は今年も不変だ。=敬称略=

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