挨拶は一流の条件

 【2月3日】

 創志学園硬式野球部監督の長澤宏行と話す機会があった。徳高望重が滲み出る相好に名将の佇まいを感じる一方で、初対面を感じさせない柔和な語り口で緊張をほぐしていただき、ありがたかった。

 取材ではなかったので、ここで名将とのやりとりを詳細に書けないけれど、こちらがデイリースポーツで阪神を追う記者だと知る以上、口をついて出るのは教え子の現在地。愛情溢れる口ぶりで、西純矢の飛躍を願っておられた。

 「本当に根が優しくて…。野球に対して真面目な子でしてね」

 そのひと言だけで十分に親心が伝わってきたし、西が2月4日の紅白戦に登板する情報もよくご存じだった。

 実は、当方は西純矢とまともに会話を交わしたことがない。入団間もない囲み取材に一度だけ…その後はコロナ禍による規制で、昨年のファームはほぼ代表取材。じっくり話す機会を謎のウイルスに奪われてしまった格好だが、ただ入団間もない頃に球団施設で顔を合わせることは何度か…。つまり僕が抱く西純矢の深い印象は、甲子園で雄叫びをあげていた高校時代と、鳴尾浜で目が合った20年の春先で止まったままだ。

 「西選手には、いつも会う度にすごく丁寧に挨拶をしていただいていました」

 僕が肌で感じた偽りのない〈情報〉を伝えると、名将は「そうですか」と破顔していた。

 昭和の体育会系だと鬱陶しがられても(?)僕は我が社の若手に対し、挨拶にうるさい。特に初対面で失礼が生じては仕事(取材)にならない。今の阪神には西のようにしっかり挨拶する若手が多くお手本になるとも思っている。

 20年ほどプロ野球界で仕事をしていて間違いなく感じること、それは、「礼節」と「一流」の相関性は間違いなくあるということ。そんな経験値でいえば、人一倍それに長ける西純矢は、超一流の条件を満たしているとさえ感じる。

 ステイホーム中に読んだ一冊に『一流を育てる』(現代書林)がある。京セラ創業者の稲盛和夫が帯紙(推薦)を書くこの本の著者は、宮内庁や迎賓館、国会議事堂の家具を手掛ける「秋山木工」の社長・秋山利輝である。秋山は当方と同じ奈良出身で、昔から名を知るけれど、著書に触れ、あらためてその哲学を知ることに…。

 「秋山木工」の人材育成を綴った同著には、同社の『職人心得三十箇条』が紹介され、心得第一に「挨拶のできた人から現場に行かせてもらえます」とある。

 「気持ちのいい挨拶は一流の第一条件」-。「心が一流なら、技術も必ず一流になる」-。秋山はそんな言葉で著述を締めている。

 家具職人とプロ野球選手は違う?僕はそうは思わないし、きっと高校球界の名将も同じ思いで指導されているのでは…と想像する。

 創志学園室内練習場に長澤監督が自ら買ったデイリーの1面(1月15日)が貼ってある。見出しは西純矢 開幕ローテ名乗り-。

 きょう、岡山から宜野座のマウンドへ思いを馳せる。=敬称略=

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