お別れのブルータイ

 【12月9日】

 冬日和の神戸をドライブしていると、ケータイが鳴った。仕事休みだったおととい午後のことだ。

 「能見です!」

 聞かずとも、用件は分かった。スマホの向こうの声色で…。

 「いま、舞洲で…」

 オリックスバファローズと契約を終えたばかりだという。

 車をとめて、どれくらい喋っただろうか。能見篤史の清々しい面持ちが目に浮かんだので、こちらもいつもよりテンションがあがった。

 背番号は26。2と6…足して末広がり。いい番号やん。そう伝えると、能見は言った。

 「いやぁ、コーチ兼任なんで、もっと大きな番号をいただくと思ったんですけど、若い番号で…」

 これも、オリックス球団の期待の表れ。シーズン最終戦で149キロを計測した41歳へのリスペクト…僕はそう感じる。

 「球団の皆さんにすごく親切にしていただいてありがたいです。舞洲の施設を案内してもらってきたんですけど、室内練習場は24時間使えるらしいんですよ」

 実は…能見宅と拙宅は徒歩圏内のご近所さん。だから、オリックスの練習拠点までドアツードアの時間が判る。

 近いもんやもんなぁ。

 「そうなんですよ」

 阪神から「構想外」を伝えられて1カ月半。生まれ、育った地元関西の球団から必要とされ、いの一番に声を掛けられたことは、とてもありがたかった。来季も家族と一緒に戦える。「オリックスさんにお世話になります」-そう決断した大きな理由でもある。

 「僕のほうから決めるとか、選ぶとか、そんな偉そうなこと言える立場じゃないですよ」

 能見は謙虚にそう語っていたけれど、当欄の取材の限りを書けば実際は、行き先を「選べる立場」ではあった。

 獲得調査の話が伝わってきたのは3球団。その一つ、セ・リーグの球団は早くから手を挙げたが、オリックスが一歩、いや、タッチの差で早かった。パ・リーグでは遠方から本気でオファーした球団が…その話はもういいか。

 コーチ兼任の肩書はともかく、オリックスの若いブルペンに彼の力、技術、姿勢、経験が還元されれば、その存在だけで指導以上の価値がうまれると、長年彼を見てきたオッサン記者は断言できる。

 オリックス能見の誕生で交流戦が楽しみだし、ロッテ鳥谷敬とのマッチアップも。いや、その前に個人的に気になることが…。

 この先「チーム能見」は解散するのだろうか。そう、毎年1月、沖縄・宜野座で自主トレを共にしてきた…あの仲間たちである。

 ずっと志は変わらないだろうけど、各々の成長のためなら前向きな〈解散〉もありだと思う。ただ間違いないことは、僕は能見に会いに行く。沖縄のどこかへ。

 あ、そうそう、オリックスと契約したときのネクタイだけど…。

 「青を選びました」

 さらば、阪神タイガース能見篤史…。=敬称略=

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