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「真実」は宮崎にも届いている

 カープ時代の金本といえば、この景色…。こんな日だから写真に収めた
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 【10月11日】

 この写真は、宮崎県日南市の山あいにある天福球場である。ご存じ広島カープのキャンプ地。懐かしい景色が目の前に広がる。ライト後方に新設された室内練習場…昔ここに古いブルペンがあった。

 20年前、まだ20代だった金本知憲がフリー打撃を始めると、打球は次々にこのブルペンの天井を襲う。すると、大野豊、佐々岡真司らカープ投手陣は頼もしそうに言うのだ。「お、カネやな…」-。

 僕は今、日南海岸を眺めながらこの原稿を書いている。なぜ、宮崎に来たのか。もちろん取材。阪神タイガースの歴史的な一日が、宮崎とどんな関係があるのか。

 実は前夜、阪神球団本部長の谷本修と、同副本部長の嶌村聡が宮崎入りしていた。甲子園の最終戦に合わせ、球団幹部が二人も南国にやって来た目的は何なのか。現在、宮崎県内で開催されているフェニックス・リーグ視察のため…ではなかった。ここからは、阪神の本社筋複数の人間を取材して、明らかになった事実を書く。

 金本阪神の4年目、19年に向け再出発するため、すなわち矢野燿大に来季1軍ヘッドコーチ就任の内示を届けるために、谷本、嶌村両首脳は宮崎へ飛んできたのだ。現在フェニックスLで2軍を率いる矢野は、このヘッド職要請を受諾。参謀役として再び金本を支える決意を固めた。時系列を整理すれば、これが10日夜のことだ。

 ところが、急転直下である。甲子園で阪神がDeNAに勝利をおさめた同日20時34分を過ぎて間もなく、心を整えたばかりの矢野の頭が真っ白になる報が届く。

 金本、辞任-。

 え?ウソでしょ…。

 ウソじゃなかった。僕の取材に答えた本社筋は、大切な事実を盛って散らかす人ではない。

 「金本監督は自ら『辞める』と申し出たのではなく、肩をたたかれたんです。来季の組閣にも携わり、『苦しい時だけど、タイガースとタイガースファンの為に一緒に再建してほしい』と頭を下げたコーチ陣を置き去りにして、全て投げ出してしまうような無責任な辞め方をすると思いますか?」

 辞任か、そうでないか。真実は2~3日も経てば周囲に漏れ、必ずメディアにも知れ渡る。いや僕がこうやって書いている間に、他の報道陣にも伝わっているに違いない。そんな阪神の“俗習”は3~4年このコミュニティーに身を置けば、アホでも分かる。

 どうせ明るみになるのに、どなたかの体裁を保つ為の青臭い演出はいったい誰を幸せにするのか。金本は一度固めた「決心」を放り投げるような、無責任なリーダー…いや、人間ではない。

 「決心」とは反骨の心である。 球団は虎党の批判を受け止め、社長の揚塩健治もつい先日「監督とは一蓮托生で」と僕に語っていた。「続投です」。谷本もメディアに向かってそう言っていた。

 天福球場に一報が届いたのは昼前だった。もう、宮崎にも真実は広まっている。この地で金本と共に鍛錬した仲間達はみんな怒っていた。聞けば広島にいるカープの幹部、関係者も。「責任を取る」とか「辞めること」に対してではなく、その仕打ちに…である。

 胃袋に幾つも潰瘍をつくり、頬が痩せこけていく鉄人を見るのは辛かった。孤独だったと思う。

 金本に連絡した。「日南にいますよ」。監督…いや、カネさん。好物だった『わが家』の地鶏、ゆっくり食べましょ。=敬称略=

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