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血が通わないコトバ

 藤川球児を獲らなかったのはなぜか。酒場で飲んでいると、二人の客が球児を肴(さかな)にして賑やかなことである。「阪神は冷たいぞ」と老(ふ)けたほうがいえば「いまさら球児でもないですよ」と若くみえる相方は極めて現実派に思えた。どちらも正論であろう。

 デイリースポーツのコラム「松とら屋本舗」(6月2日付け)で興味深いコメントをみつけた。阪神のフロントが球児と交渉した、その内容の一部である。

 「九回は呉昇桓、八回は福原。六、七回が空いているのでその辺りで投げて欲しい。返事は1週間以内に…」

 なんの変哲もないコメント?そうかもしれないが、これだけのコメントを引き出しているのは、コラムの記者とフロントマンとの日頃の濃い付き合いの賜物のような気がする。

 右のコメントを読んで、これを言ってしまえば球児は来んわなと思った。ここ一番の盛り上がった場面でなく、空いている隙間で投げて…その通リのことなんだろうが、そこまで際立ったことは口にしなくていいのではないか。なんともバカ正直な。と思い、そのあと、もう一度、読んで これは実は断るために工夫したコメントではないのか。もし、そうだとしたら、これは相当な食わせ者かもな、とこっちのほうが正しい分析のような気がした。どっちなんだろう。

 この交渉を星野仙一にやらせていたらどういうことばで口説いたろうか。「四の五のは言わん。黙って帰ってこい」「俺はさ、お前ともう一度、同じユニホームを着て野球をしたいんだよ」。こんなことだろう。もっとも球児を世にだしたのは星野でなく、岡田彰布だったが、岡田なら星野ほどの弁はたたないにしても「待ってるからな」という短文で球児の心をわし掴みしたような気がする。

 「阪神のフロントには人の心をくすぐる術(すべ)もないような気がする」という人は世に多い。

 そういえば、現役時代の掛布雅之が飲酒運転で捕まったとき、時のオーナーの久万俊二郎がマスコミの取材を受け「掛布のあのバカが」ともろに愚か者扱いして話題になった。いやしくも掛布はミスタータイガースの看板を背負った男である。「久万には親心っていう感情はないのか」と世の阪神フアンは呆れた。掛布が引退後、阪神からコーチなどの要請がないのは久万の怒りがまだ解けていないから、とされたが、久万の掛布へのバカ発言には実は笑うにわらえないオチがある。

 あれは兵庫県警本部から、「スターの掛布だからこそ厳しく叱ってください。あまい説諭では世間が納得しませんから。強く叱ってください」と言われ 正直者の久万さんがついバカとやってしまったらしい。久万夫人がいう。「久万のほうがバカなんです」。(敬称略)

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