球児阪神 開幕ダッシュ成功の理由とは 伏見が証言「選手全員、役割が分かっている」→九回にドラマ演出
セ・リーグは対戦カードが一巡し、阪神は11勝4敗で首位に立った。球団では2リーグ制導入以降、史上初のリーグ連覇に挑むシーズン。開幕ダッシュ成功の背景に終盤戦の強さがある。ここまで15試合のイニング別得点は九回の「13」が最高。変幻自在の勝ちパターンが紡ぐ「九回の虎」を生み出す背景とは。3球団を渡り歩く新戦力、伏見寅威捕手(35)の証言とともに紐(ひも)解いていく。
セ5球団との対戦が一巡した。阪神は11勝4敗で首位。開幕ダッシュに成功した。下馬評通りと言えばそうなのだが、昨季から比べると戦い方に変化が見える。石井の負傷、及川の不調で勝利の方程式が崩壊。ベストメンバーではない中で、イニング終盤の粘りが勝利を呼ぶ。そんな戦いが「九回の虎」を生み出している。伏見の証言だ。
「特別なことをやろうとしていないんですよね、選手全員が。自分のやるべきことを分かっていて、後から出る選手も役割が分かっている。だからリードされていても、慌てる雰囲気がないというか。自然体で1試合が流れている感じですね」
15試合のイニング別得点は九回の「13」が最高。象徴的な試合が3月29日の巨人戦、4月4日の広島戦、同10日の中日戦だ。10日は1点ビハインドの八回、先頭の代打・福島が右前打で出塁。犠打で進める選択肢もある中で、近本の打席で迷わず走った。アウトにこそなったが、続く近本も左前打で出塁するとスタート。得点圏に進んだ。
迎えた九回だ。佐藤輝、大山の連打で1点差に迫ると、代走・植田が木浪の打席で3球目に二盗。無死二塁から木浪は進塁打となる一ゴロで走者を進め、最後は代打・前川の適時二塁打で試合を引っ繰り返した。今季、藤川監督が求めるのは「束になって戦う姿勢」。開幕前、ミーティングで全選手に伝えたが象徴的な試合後、指揮官は「相手にプレッシャーをかけ続けた」とうなずいた。
そんな束になった選手を自在に動かす、藤川監督のマネジメント力もある。チーム首脳の一人は「ヒーローを探す起用法」と表現する。3日の広島戦。エース左腕・床田の対戦に支配下登録したばかりの福島を使った。実はドラフト3位の岡城(筑波大)がスタメン予定だったが直前で変更。福島は五回、プロ初安打で起用に応えた。勝ちながら育てるを実践する春。チーム首脳が続ける。
「乗っていると感じたら、とことん福島を起用する。開幕3戦目、代打で気持ちを出した木浪もそう。チームとして走り出した船の推進力も強いけど、必死に乗ろうとしている選手は乗せてあげる采配。乗り遅れている選手はいないか、常に探しているように見える」
指揮官としてコーチには「データも大切だが、生きた野球をしてほしい」と伝えている。不断の努力、綿密な準備の上で最後に求めるのは感性。「きっかけの時期ですから、この春は。打席に向かう、代走で、リリーフでいく気持ちがね。自分も何とかこのチームに乗るんだという気持ちが連動する」と言う。森下、佐藤輝のバットに注目は集まるが、直近の4連勝でも前川、中野ら日替わりヒーローが生まれた。
そんな変幻自在な勝ちパターンを支えるのが、他球団を圧倒する豊富なローテーションだ。11勝のうち8勝が先発の白星。村上、才木の両輪に2完封の高橋が加わり、トリプルエースの予感も漂う。ルーカス、大竹、伊原、茨木と現在は7人で回す布陣で、2軍では西勇、門別、ラグズデールらも結果を残してチャンスを待つ。「僕が相手チームなら?嫌ですよね」とは伏見。リーグ連覇へ死角は見当たらない。(デイリースポーツ阪神担当キャップ・田中 政行)
