ヤクルトと阪神のセ・リーグＣＳファイナルＳが１２日から神宮で始まる。レギュラーシーズン３位からの“下克上”を目指し、ファーストＳでＤｅＮＡを退けた阪神。デイリースポーツ評論家の佐藤義則氏（６８）が「村上封じ」などファイナルＳ突破へのポイントを解説した。

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　ＤｅＮＡとの３試合では２戦目に完封負けを喫するなど、なかなか得点できなかった阪神打線。ただ、それは相手も一緒で、こういう短期決戦で大量点を取っていくというのは難しいものだが、それを差し引いたとしても気になったのは大山と佐藤輝の状態だ。

　大山は９打数無安打。「打ちにいこう」という積極性が感じられなかった。狙い球を絞りきれずに迷いながら打席に立っているように見えた。佐藤輝も同じ。第３戦では第２打席で甘い球にバットを振って、たまたまホームランになったけど、その後の２打席はいずれもフォークで空振り三振。まったくタイミングが合っていなかった。３試合で１０打数２安打と、こちらもバットは湿っていた。

　中野、近本の調子がいいだけに、あとを打つ大山、佐藤輝の調子が上がってくれば、得点力も上がっていくが、主軸２人が現状のままではヤクルト投手陣に対しても大量得点は望めない。ファーストＳを終えて中１日と修正できる時間もなかっただけに、試合の中でなにか復調のきっかけをつかめることができばいいのだが。

　投手力は阪神が上回っている。中盤までにリードを奪えば、後ろには浜地、湯浅といった強力な救援陣が控えているだけに勝機は高まる。逆にいえば、ヤクルトの救援陣もいい投手がそろっているので追いかける展開になると苦しい。

　４番・村上をどう封じるかも勝敗を大きく左右する。レギュラーシーズン終盤は調子を落としていたが、それでもヤクルト打線の中で最も怖い存在であることに異論はない。コースをしっかり投げ切れれば、村上といえどもそんなに打たれることはないと思うが、間違ってはいけないのが攻め方。村上の弱点とされる内角高めへの速い球をいかに使うかもポイントになるが、この球にこだわり過ぎるのは危険だ。少しでも高さを間違えたり、甘めに入ってしまうと痛い目に遭う。

　カギは外角低め。そこを基準に攻めていくことが村上封じのベースになる。内角を攻めるにしても、外の球である程度、誘ったり、崩したり、外角に目付けさせるなどした上で投げないといけない。どっしりと構えているところにいきなり内角勝負にいき、それが甘くなった時は、まず打たれることを覚悟しておいた方がいい。

　村上の前に走者を溜めないようにすることも大切だ。山田がどこまで復調しているのかというのもあるが、まずは１番の塩見をきっちりと抑えていきたい。また阪神投手陣は中村にもよく打たれている（打率・３１１）ので、そこも気をつけないといけない。

　ＤｅＮＡとの第３戦で才木の球を受けた梅野のリードについても触れておきたい。初回からストレートとフォークの連投。さらにピンチになるとフォーク、フォークの連投だった。フォークという球は振ってくれれば空振りも取れるけど、見逃されればボールになりやすい球でもある。ファウルにされたり、見逃されるなどしてカウントを悪くすると、投げる球がなくなり、ますますフォークに頼らざろうえなくなる。この日の梅野は立ち上がりからピンチの時のようなリードをしていて、才木も三回でアップアップの状態だった。

　こんな配球をしていては投手の方が持たない。１イニング限定の救援投手ならそういう力勝負もありだが、ある程度、長いイニングを投げることが求められる先発に対しては、いろんな球を使いながらカウントをつくっていくべきで、勇気を持って遅い球も使っていかないといけない。速い球ばかりでは、そのイニングでさえも持たなくなってしまう。ファイナルＳでは配球面もしっかりと考えて臨んでもらいたい。

　いずれにしても、阪神はファーストＳを終えて中１日で再び厳しい戦いが始まる。３日のレギュラーシーズン最終戦以降、実戦から遠のいているヤクルトより、阪神の方が試合勘があるという声もあるが、私の経験からいえば、こういう短期決戦ではあまりそれは関係ないと思う。これは両チームにいえることだが、打線でいえば、序盤にだれかがポンポンと打てば、チームとしても波に乗っていけるだろう。

　阪神にはファーストＳ突破の勢いで勝ち進んでほしいが、そう簡単な戦いではない。相手に１勝のアドバンテージがあり、しかも敵地。まずは初戦を全力でものにして１勝１敗のタイにすることがファイナル突破への絶対条件になってくる。