【阪神ドラフト選手特集・伊藤稜(1)】広島・中村奨に打たれた苦い思い出の聖地でリベンジ

 10月のドラフト会議で阪神から指名を受けた8選手(1~7位、育成1位)の連載をお届けする。8人目は育成ドラフト1位・伊藤稜(22)=中京大。

  ◇  ◇

 甲子園のマウンド上で、ぼう然と立ち尽くす伊藤稜の姿があった。「これがドラフト1位で選ばれていくような選手のバッティングなのか…」。2017年夏の甲子園大会初戦、中京大中京VS広陵のワンシーンだ。

 6点ビハインドの八回2死一塁。プロ注目のスラッガー・中村(現広島)と相対した。1ボールから138キロの直球をいとも簡単にはじき返され、白球は右翼ポール際に吸い込まれた。高校からのプロ入りを目指していた伊藤稜の自信が、打ち砕かれた瞬間だった。

 「引きずっていてもしょうがない」とプロ志望届の提出を見送り、中京大でレベルアップをすることを決めた。だが進学してからの2年間は、思うような投球ができなかった。なぜ結果につながらないか-。恩師の半田監督は見抜いていた。

 「スピードボールを投げられるんですけど、球の重さや質に関してはまだまだ。だから、体をしっかり作っていかないとプロに行けないよということは彼に伝えました」

 転機となったのは3年秋。左肩痛で一度も試合に登板できなかったが「アウターだけを鍛えるのではなく、インナーもしっかり鍛えていきました」とウエートトレーニングと並行して速筋、遅筋をバランスよく鍛えるため、ボックスジャンプに取り組み、この時期に体重も10キロ増。80キロ台後半に突入した。

 その努力が成果として表れていく。今年3月のオープン戦・ホンダ鈴鹿戦で自己最速の150キロを計測し、大台を連発。半田監督は「直球も変化球も高い精度で、これならプロで通用するなと思えた投球でした。入学時から20キロ近く体重も増えて、体つきも本当に大きくなりました」とプロ入りを確信したという。

 阪神から育成1位で指名され、苦い記憶が残る甲子園のマウンドが本拠地となる。「自分の中で今、甲子園には悪いイメージしかない。甲子園が得意な場所、良い場所となるようにリベンジします」。大学4年間で得た自信を胸に、聖地で確かな成長の跡を刻んでいく。=おわり=

 【アラカルト】

生まれ 1999年11月8日、愛知県豊明市出身の22歳

サイズ 178センチ、86キロ

投打 左投げ左打ち

球歴 小学1年から愛知県のホーメー少年野球クラブで投手として野球を始め、中学時代は東海ボーイズに所属。中京大中京では3年夏に甲子園に出場し、その後中京大に進学。

最速 150キロ

球種 スライダー、カットボール、チェンジアップ、カーブ、フォーク 

好きな食べ物 みたらし団子

好きな女優 今田美桜

登場曲を選ぶなら 『ディスイズミー』「阿部詩さんも聴いていたそうなので」

座右の銘 「思考は現実化する」 

家族構成 父、母、兄

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