【阪神新人紹介】ドラフト8位・石井大智【1】

 10月のドラフト会議で阪神から指名を受けた9選手の連載をお届けする。第8回はドラフト8位・石井大智(23)=四国ILp高知。プロへの扉を開くまでの道のりを振り返る。

  ◇  ◇

 あの日、街は一瞬にして違う景色を映した。2011年3月11日。東日本大震災は多くの命を奪い、人々の夢を壊した。9年前、中学1年生の時だった。石井が描く将来も、180度の方向を変える。小学校の卒業文集に書いた夢はプロ野球選手。だが、野球は辞める…はずだった。

 「何が起こったか分からなくて。めまいで倒れたのかと思いました」。地震発生時、トイレにいた石井は、強烈な揺れを全身に受けた。電車は止まり、家に帰れば停電。秋田県も被害を受けたが、後にテレビで見た岩手県、宮城県などの大津波に言葉をなくした。「ひどいな…」。倒壊した家々に決心した。

 「同じ東北地方の被害を知った時に、住宅の勉強をしようと思ったんです。地震でも倒れない、津波がきても流されない、そんな家をつくりたかったので」

 進学先に選んだのは秋田工業高等専門学校。5年制の高校で土木や建築を勉強するため、環境都市工学科を専攻した。「僕は体も小さくて細かったし、食が細かったんで野球は無理かなって。それもあって、高校では好きだったバドミントンをやるつもりでした」。だが、入学式で運命的な再会が待っていた。

 旭川小学校3年生の時、姉の友人に誘われて野球を始めた。3歳の頃、テレビで見たオリンピックの体操競技をマネて、いきなり側転ができたほどの身体能力。野球でもメキメキと実力を付け、「あの学校にすごい投手がいる」と地区でウワサされるほどだった。高校に進学し、当時対戦したチームの選手とクラスメートになった。

 「野球、やるんでしょ?」。悩んでる。そう答えると手を引っ張られるように、野球部の練習見学に連れられた。決してレベルは高くなかった。だが、雰囲気に魅力を感じた。「試合にも出られるだろうし、みんな楽しそうだった。これなら…って思いました」。描いた通りにエースとして活躍し、3年間の高校野球生活を終えた。

 その秋だった。秋田東中の同級生で、チームメートだった成田翔が、ドラフト3位でロッテに指名された。強い衝撃と同時に、幼少期の記憶がよみがえった。初めて描いた夢はプロ野球選手。速い球を投げる姿に憧れた。

 「今、よく思うんです。なんであの時、人生がガラっと変わったんだろうって。悔しかったんですね。自分も本気でやれば、できるんじゃないかって」-

 ☆アラカルト

 生まれ 1997年7月29日、秋田県秋田市。23歳。175センチ、81キロ。右投げ右打ち。

 球歴 旭川小3年から「旭川スポーツ少年団」で軟式野球を始める。秋田東中ではロッテ・成田翔と同期。秋田高専卒業、四国ILp高知に入団。50メートル6秒。遠投113メートル。

 好きな食べ物 祖母が作るマーボー豆腐。

 好きな有名人 歌手・高橋優。

 座右の銘 哲学者ルソーの言葉「Living is not breathing but doing」(生きることは呼吸をすることじゃなく行動することだ)。

 趣味 筋トレ。自信のある筋肉は上腕三頭筋。

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