阪神・藤川 盟友の松坂へ「必ず投げる姿を見せて」【引退あいさつ全文】

 セレモニーでスピーチする藤川(撮影・山口登)
 ナインとタッチする藤川(撮影・山口登)
 引退セレモニーで手を合わせる藤川(撮影・田中太一)
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 「阪神0-4巨人」(10日、甲子園球場)

 今季限りで現役を引退する阪神・藤川球児投手(40)が九回、現役最後のマウンドに上がり、12球のオール直球勝負で三者凡退に抑えた。最後の姿を見ようと詰め掛けた2万1392の観客から大歓声がわき起こり、涙を流すファンの姿もあった。

 引退セレモニーでは言葉に詰まる場面もあったが、涙は見せず、笑顔でファンに別れを告げた。

 引退あいさつの全文は以下の通り。

 「では、スピーチを始めたいと思います。まず初めにこの度、野球選手・藤川球児のために、こんな素晴らしい舞台を用意していただいた阪神タイガース球団、矢野監督をはじめとするコーチ、選手、スタッフの方々に御礼を申し上げたいと思います。本日は阪神タイガースファン、そして全国の野球ファン、そしてプロ野球界の先輩方皆さまに、今日この日を迎えるまでに、皆さまから頂いた夢や希望を持ち、人生を前向きに生きることができた御礼を伝えたいと思います。

 1999年に阪神タイガースに入団して、同じドラフト1位には同級生、西武ライオンズ松坂大輔、そして巨人軍の上原浩治さんがいました。2人は1年目から素晴らしい活躍をしていました。2人を見て、失敗と故障を繰り返す自分とを比べると、自分には無理だと、普通なら諦めてしまうでしょう。でも、僕は今は勝ち負けは付いていないと、認めることだけは絶対にしませんでした。

 当時、周りから厳しい視線を感じたり、厳しい言葉を投げかけられることもたくさんありました。しかし、どんな時も、いつも必ず見返してやる。そう思い、やってきました。そして2005年、タイガースで優勝することができました。最高の思い出です。

 松坂と上原さんがメジャーリーグに行って、追い掛けるように、自分もメジャーリーグに挑戦しました。しかし本当に苦しいことばかりで、孤独でまた、新人の頃のようにうまくいかない日々が訪れ、明日すら…(言葉に詰まった後)…大丈夫です(笑)。明日すら見失いそうになっていました。そんな時、阪神タイガースに入団してから苦労した経験が僕を救ってくれました。オレは負けていない…見返してやる。独立リーグからもう一度リスタートして、自分の力を見せて、地元・高知の子供たち、そしてプロ野球ファンをびっくりさせたいと思いました。

 そこからタイガースに戻り、3年間かけてやっとクローザーのポジションに戻ることができました。見返してやる、その時にはもう、そんな気持ちは全くなく、それが皆さまからの叱咤激励というものなんだと知り、心の底からありがとうという感謝の気持ちでいっぱいでした。僕は自分自身に度々、襲いかかる苦難に打ち勝つことができました。

 清原和博さんへ、あなたがいなければ今の僕は存在しません。僕をここまで成長させてくれたのは、清原さんとの対戦、そして存在です。何年か前になりますが、僕も清原さん自身も苦しい時にお守りを届けてくれました。体を大事にしろよ。すごく力になりました。キヨさんはとても優しい方です。必ず御礼を伝えに行きますので、今後ともよろしくお願いします。

 ライバル・松坂大輔へ。必ず投げる姿を見せて世の中の人を元気にしてください。あなたのそういう姿が今の日本には必要です。僕があなたの一番の応援団になります。目標でいてくれてありがとう。

 それでは阪神ファンの皆さまへのお礼を言わせてください。僕の投げる火の玉ストレートには甲子園のライトスタンドの大応援団の皆さま、チームの思い、そして全国のタイガースファンの熱い思いがすべて詰まっています。それがみなさんの知る火の玉ストレートの投げ方です。それは打たれるはずがありません。打者のバットに当たるはずがありません。僕が言うのも変ですが、不思議な力が湧いてきて、普段の自分ではなくなるのです。野球選手、藤川球児というのは皆さまの気持ちの固まりだったんだと思います。ファンの皆さまにとって僕の存在は誇りというのであれば、僕にとってもファンの皆さまが誇りです。その気持ちをこれからは後輩たちに一緒に送り続けましょう。

 そしてタイガース史上最高のキャッチャーで僕が世界で一番尊敬している矢野監督を日本一の監督にさせてあげましょう。選手やコーチのみなさん、あとはよろしくお願いします。もし、困った時はいつでも呼んでください。すぐに駆けつけます。

 そして、僕自身よりも本当に一度も世間のみなさんに顔も見せず、頑張って来てくれた家族へ、この場を借りてメッセージを送らせてください。今までたくさん野球のために我慢させてきたけど、やっと明日から夫として、普通のお父さんとして家族のために何でもしてあげられるようになりました。長い間お待たせしました。これからは、何をするときも、一番にみんなを優先します。今までよりもさらに笑顔の絶えない家族になりましょう。

 そして、親父、お母さん、名前を球児にしてくれてありがとう。野球をやらせてくれてありがとう。辞めようとしている時、何回も引き留めてくれてありがとう。2人が元気な間に恩返しする時間ができました。これから少しずつ恩返しさせてください。そして、この1カ月、セ・リーグの各チームの方々、球場の関係者の皆さま。こんな一人の選手のためにセレモニーを用意してくださって、本当にありがとうございました。きっとたくさんの子供たちへの夢や希望につながったと思います。夢をつなぐ、これが僕の現役生活最後の1カ月でやりたかったことです。

 それでは皆さん、野球選手、藤川球児とサヨナラをする時がきました。子供の頃からの先生方、今までのすべての友人、そして世界中の野球ファンの皆さま。皆さまのおかげで最高に素晴らしい野球人生を送ることができました。長い間のご声援、本当に本当にありがとうございました。

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