阪神・藤浪 勝った!待ってました692日ぶり星 先制V撃、連敗も0行進も止めた

 試合に勝利し、拳を握る藤浪
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 「ヤクルト4-7阪神」(21日、神宮球場)

 待ちに待った瞬間がやって来た。阪神の藤浪晋太郎投手(26)が粘り強い投球で、2018年9月29日・中日戦以来、実に692日ぶりとなる白星をマークした。打撃でも二回に38イニングぶりの得点をもたらす適時打を放った。新型コロナウイルス感染など紆余(うよ)曲折のシーズンとなった今季だが、この1勝を機に、チームのため、そしてファンのために白星を重ねていく。

 ベンチで試合終了を見届けると、藤浪は静かに右拳を握った。見上げれば喜ぶファンの姿が目に映る。敵地とは思えぬ大きな拍手、声援が注がれた。復帰5戦目の1勝。チームの連敗を止めた692日ぶりの勝利に、あの日の記憶が重なる。またここに、必要とされる場所に帰ってきた。

 「すごく長かった。なかなか自分でも、勝てない投球が続いていたので、やっと勝てたかという気持ちです」

 過去4試合に比べれば不安定。それでも勝利への渇望、執念を前面にした投球はナインにも伝わった。4位浮上を導いたのが藤浪なら、呪縛を解いたのも藤浪だ。二回、1死満塁で巡った打席。三塁内野安打で38イニングぶりに得点を刻む。決勝打となる先制打から4点の援護を受けた。

 直後に味方のミスから2点を失ったが、大量リードを背に攻めの投球スタイル。最速155キロの直球を主体に、140キロ後半のフォークで押した。五回に村上、七回には坂口にソロ本塁打を浴び、4失点の途中降板。それでも「晋太郎のために」-が、チームに一丸の空気を生んだ。

 「あとがないつもりで臨む」と誓った2020年。開幕ローテをほぼ手中に収めた中、新型コロナウイルスに感染した。復帰後は練習遅刻による2軍降格、6月上旬には軽度の右胸筋挫傷を負った。ここ数年は結果も出なかった。「苦しいこと、つらいことばかりでした」。どん底の日々を過ごす中、支えられた記録と記憶がある。

 「よくドラフトの映像を見るんです。あの日、僕が阪神に入ることで、みんなが喜んでくれた。俺って、こんなに必要とされていたんだなって」。甲子園春夏連覇の偉業を成し遂げた後、4球団競合の末に阪神が交渉権を獲得。クジを引き当てた和田監督(当時)が、後ろを振り返って両手を掲げたシーンだ。

 「球団スタッフやスカウト、ファンの方まですごく喜んでくれた。それがうれしかったんです」。くじけそうになったのは一度や二度じゃない。2軍では1軍の試合は見なかった。いや、見られなかった。いつしか試合開始に合わせての外食が日課になった。「藤浪君は甲子園のマウンドが似合う」-。あの日の記憶が支えだった。

 6回1/3を6安打4失点。復活の過程にも似た、長いトンネルの先にあった光。自然と笑みが浮かぶ。「一つ人間として成長できた、大きくなれたなと思います」。晴れやかな表情に、明るい未来が見える。まず1勝、まだ1勝。必要とされる場所で輝きを取り戻した。再スタートの1勝だ。

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