宮崎恒彰氏 難題を乗り越えるために「強い組織に必要なのはサムライ」

 2006年から2年間、阪神の第8代オーナーを務めた宮崎恒彰氏(77)が、デイリースポーツ紙面で激動の日々を振り返ります。02年に取締役としてタイガースに入団。黄金時代の構築に尽力し、村上ファンド問題、30億円問題など、猛虎の危機に立ち会ってきた。

  ◇  ◇

 類いまれな行動力でタイガースの30億円問題を無事に終結させた宮崎氏。自らを変革期の問題を処理する「セットアッパーオーナー」と自認していなければ、成し得なかったかもしれないという。

 「私は非常時のオーナーやったわけですから。自分で言うのもおかしいけど、自分が地位を守ろうとか、気の弱い人間やったら『そうでっか』と30億円払っていたんかもしれん。いつ辞めても良かったわけやから」

 その上で、組織には平時と変革時、2パターンが存在すると持論を明かす。社長が周囲を生え抜きで固め、安定して業務を遂行させていくのが平時。業績が軌道に乗って運営していくにはベストの選択だ。しかし、時に会社の存亡をかけ、難題を乗り越えるためには、強い組織作りが必要だという。

 「強い組織に必要なのはサムライなんですよ。一過言を持った専門家という意味でね。いろんな経験、文化を持った人がいて、それをまとめるのが非常時のリーダーの仕事。5人中2人はそういう人がいて、組織をかき回さないと、空気がよどんでしまうんです」

 宮崎氏がオーナー時代の07年、親交のあった米大リーグのある球団から、チケット担当の日本人社員を使ってもらえないかと連絡を受けた。メジャーのチケット販売システムを生かせないか。そう考えた宮崎氏は獲得にいったんは動いたが、「いつオーナーを辞めるか分からない」と最終的には自重した。

 「外部の人間を入れるには、リーダーの強烈なバックアップがないといけない。そうしないと外部から社員を呼んできたはいいが、何か失敗すればつぶされてしまう可能性がある。だから組織のリーダーというのは、どんな状況でも全力で支えてあげないといけない。特に大企業や、伝統のある企業はそうやと思います」

 2008年5月、阪急との経営統合も方向性が固まり、軌道に乗った。チームも4月を驚異的なペースで勝ち続けていたことから、宮崎オーナーは退任を決意する。電鉄本社の坂井社長を新オーナーとする案を固めた。

 「やっと本社の方も平時と言えるようになったから。電鉄のトップがオーナー職を務めるのが筋。本来ある形に戻ったということでしたな」

 村上ファンドによる買収危機を乗り越え、30億円問題も収集。チームも07年オフにFAで新井を獲得し、安定した成績を残していた時期だった。セットアッパーとしてタイガースのピンチを切り抜け、万全の状態でバトンを渡すために身を粉にした2年間。「いろんなオーナーの方とも仲良くなれて。今思えば、貴重な経験やったと思いますよ」。そう穏やかな表情で振り返った。

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