宮崎恒彰氏「タイガースは関西の文化」村上ファンド攻防戦の最中オーナー就任

 2006年から2年間、阪神の第8代オーナーを務めた宮崎恒彰氏(77)が、デイリースポーツ紙面で激動の日々を振り返ります。02年に取締役としてタイガースに入団。黄金時代の構築に尽力し、村上ファンド問題、30億円問題など、猛虎の危機に立ち会ってきた。

  ◇  ◇

 阪神の歴代オーナーの中で、宮崎氏は唯一、電鉄本社の社長および会長職に就いていない。2006年6月の就任発表時は専務取締役。剛腕で虎の変革を成し遂げてきた男に白羽の矢が立った当時、本社は村上ファンド問題という苦境に立たされていた。

 発端は阪神電鉄開業100周年で優勝が目前に迫った05年9月27日、投資家の村上世彰氏が阪神電鉄株などを買い占め、筆頭株主になったことが明らかになった。その後も株式の取得は進み、村上ファンド側は「阪神タイガースホールディングス」という持ち株会社をつくり、上場するという構想を語った。

 そうなれば株価操作のため、チームの勝敗に不正な力が働く可能性もゼロではない。騒動はプロ野球全体を巻き込み、オリックスの二重保有問題も取り沙汰された。他球団も買収防止へ動いた。タイガースも徹底抗戦する中、ある経済誌の記者が発した一言が、宮崎氏の意識、そして世論の流れを変える。

 「宮崎さん、逃げ回っているのは損ですよ」-。

 「『マスコミを通じて広報しとかないと、世間は味方になってくれませんよ』と言いはったんですわ。なるほどなと思った」

 未曽有の問題に本社の広報体制は機能不全に陥り、役員会の足並みもそろわなかった。その中で宮崎氏はSD職に就いていた星野氏とタッグを組み、攻勢に転じる。

 「当時、仙さんがニュース番組に出ていたでしょ。そこでガンガン言ってもろたんです。本番前に電話で打ち合わせをして、『こういう感じでいこか』とか」

 闘将が「天罰が下る」など地上波のニュース番組で強いメッセージを積極的に発信したことで、ファンは「タイガースを守れ!」という風潮に変わった。そして“村上憎し”という空気へ変わった。情勢が悪くなった村上ファンドは、村上氏がインサイダー取引容疑で逮捕されたことも重なり、最終的に阪急からの株式公開買い付け(TOB)に応じた。村上ファンドによる本社乗っ取りという最悪の事態は避けられた。

 「あの時は広報力の勝負やったと思います。あと情報収集力もね。村上側の本当の狙いがタイガースではなく、電鉄本社が持つ梅田の土地を切り売りしようとしていたことが分かったのも大きかった。これでタイガースは攻めることができた」

 最終的にこの問題の責任を取って本社の手塚会長、西川社長が退任し、新たに坂井信也常務(後の第9代オーナー)が社長に就任。阪急との経営統合問題が継続していたこともあり、専務の宮崎氏がタイガース第8代オーナーとして就任することになった。

 「坂井くんもあの時は大変やったし。自分は球界の裏のことはよう知ってて、つながりも少なからずはあったから。いわば“セットアッパーオーナー”やったんですわ」

 06年6月末の株主総会で宮崎氏はこうファンの前で宣言した。「タイガースは関西の文化です」-。象徴を守り抜く決意を固めた矢先、タイガース、電鉄本社、そしてプロ野球のオーナー陣を巻き込んだ壮絶な修羅場が待っていた。

 ◆宮崎 恒彰(みやざき・つねあき)1943年2月9日生まれ、77歳。兵庫県出身。神戸大学経営学部卒業後、65年に阪神電鉄入社。88年、関連企業の山陽自動車運送に出向後、96年本社取締役、00年常務、社長室副室長。04年代表取締役専務となり、06年6月から08年6月まで阪神タイガースのオーナーを務めた。

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