CSファーストS突破は矢野采配次第…奇跡的CS進出の虎にご意見番が提言

 矢野阪神がラグビー日本代表ばり?のミラクルを起こした。今季最終戦となった9月30日の中日25回戦(甲子園)に勝利、今季最多となる6連勝で3位に浮上、奇跡の逆転CS進出を果たした。この日が長年チームをけん引してきた鳥谷敬内野手(38)のタテジマでの“甲子園ラスト試合”だったが、CS突破後の日本シリーズで再び見られる可能性が残った。矢野体制1年目は69勝68敗1分、貯金1でフィニッシュ。1年間、虎を見つめてきたレジェンドOB・小山正明氏に、今季の総括と、5日(土)から始まる2位・DeNAとのCSファーストS(横浜)の展望を聞いた。

  ◇  ◇

 奇跡は、起きるものでなく、起こすもの-とよく言われるが、虎ナインが自らの手でその奇跡を起こしてみせた。メッセンジャー引退セレモニーがあった29日に続き、高橋聡の引退セレモニーに加え、鳥谷のタテジマでの甲子園ラスト試合となった30日の中日2連戦に連勝。都合6連勝とし、先に全日程を終えていた広島を最後の最後でうっちゃって3位に浮上した。堅牢と思われたCS進出への扉をこじ開け、5年ぶりのリーグ優勝を果たした原巨人への挑戦権を得る戦いに進むことができた。想定外とも言える広島の大失速などが背景にあるとはいえ、勝率5割を上回っての3位確保は評価すべきものと言える。

 夢心地の中、いつものように小山氏の携帯を鳴らす。「首の皮一枚でも意外に分厚い皮かも」と“予言”していた氏が、実際に起きたこのミラクルをどう分析、評価するのか。いつもなら言葉の端々に辛みを練り込んで話すが、さすがに今回は甘口のはず…。そう思って聞いた第一声は「やりましたな!!」だった。ところが、そこから意外なところに話が逸れていった。

 -本当にミラクルが起きましたよ。「首の皮一枚は厚いかも」と言われていましたが、本当にぶ厚かったですね(笑)。

 「そうやったなぁ。最後の最後でCSに食い込んだんやから、よくやったと言うべしやろう」

 -9月24日の巨人戦に勝てば面白い、とも言われてました。その通りに勝ち、そこからさらに3連勝。計6連勝でフィニッシュですよ。

 「27日に広島が中日に負けたのが、阪神のモチベーションをグッと上げたわな。まさに広島サマサマやで」

 -その意味では、広島に勝って阪神に連敗した中日サマサマ、とも言えなくもありません。

 「中日は順位が確定していたとはいえ、最終戦に先発させたのが14日のナゴヤドームでノーヒットノーランをやった大野雄やろ。防御率のタイトルがかかっていて、それをクリアした段階で代わったわけやが、僕はあの交代には納得がいかん。四回1死までパーフェクトやろ?あの時の出来からして、失点の恐れなんかどこにもなかった。そやのに交代させて出したのが三ツ間。その時点で阪神の勝ちを確信したんやけど、中日ファンにすればたまったもんやない。あれはやっちゃいかん。わざわざ球場まで足を運んでくれたファンに失礼や!!」

 虎党にすれば難攻不落の大野雄が降板してくれて助かったのだが、レジェンドはそんな相手を攻略してCS進出を確定させてほしかったという。また、大野雄に対しても「異様な球場の雰囲気の中で投げてつかんだタイトルであれば、さらに箔が付いたはず」と指摘。このあたりは、現役通算320勝を挙げた大投手の矜持(きょうじ)を感じさせる。

 横に逸れた話を矢野阪神に戻し、今季の戦いぶりの総括を聞いてみた。金本前監督からバトンを受け、1軍を指揮することになった矢野監督。『ぶち破れ!オレがやる!!』をチームスローガンに掲げて2005年以来14年ぶりのV奪還を目指すも、土壇場でのCS進出に止まった。最後の踏ん張りは評価できても、全体を見れば物足りなさも否めない。これをレジェンドはどう見るのか。

 -1軍監督1年目の矢野監督をどう評価します?最後の戦いをもっと早い段階でやっていれば…と思うのは“素人考え”ですかね。

 「プロの1軍監督をやろうという人に、1年目も2年目も関係ないよ。その意味においては、シーズン中、何度か首をかしげることもあった。矢野監督も2軍でしっかり各選手を見ていたわけだし、その能力は把握していたはずやが、決して思うようにはいかんかった。『4番・大山』はそのいい例やないかな。僕は、8月頃から最後のような戦い方をすべし、と言うとった。違うか?」

 -確かに。残りが30試合を切ったあたりからそう言われてました。しかし、もう後の祭りなんで、CSファーストSの話に移りましょう。5日から始まるDeNAとの試合は何がキーになると思いますか?

 「短期決戦は何が起こるかわからんからね。シーズンのような長丁場になると力差がもろに出るけど、短期はちょっとしたことでガラッとムードが変わってしまう。そのムードをどうやって作り、乗るか。焦点はそこやろ」

 -まさに矢野監督の手腕、ということですね。戦い方とすれば最後の6試合のような感じになりますか?

 「確かに、投手陣が主役やろうな。巨人、DeNAとの比較においては、阪神が一番しっかりしている。チーム勝ち頭(10勝)の西と青柳を先発の軸とし、つないでつないで凌ぎ切る野球に徹することやね。高橋遙は3戦目なんかな。ガルシアが中(継ぎ)がええやろう。とにかく、今の調子を維持してファーストSを突破し、巨人とのファイナルS、さらに日本Sまで駒を進めてほしい」

 九分九厘、Bクラスが確定的な絶体絶命の状況から生還し、何とか3位に滑り込んでCS進出を決めた矢野阪神。来季に向けた課題は山積するが、まずは他力&自力で得た“日本一へのチャンス”を生かし、15年ぶりのV奪回に向けた自信をつけたい。甦った虎に恐れるものは、何もない。

(デイリースポーツ・中村正直=1997~99年阪神担当キャップ、前編集長、現販売局長)

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