大山 逆転サヨナラ3ラン 6番降格に燃えた!目頭熱く「うれしいの一言です」
「阪神6-5広島」(10日、京セラドーム大阪)
阪神は106試合目で6番に降格した大山悠輔内野手(24)が、2点差の九回無死一、二塁から右翼席へ自身初となるサヨナラアーチを放った。3番・福留、4番・マルテ、5番・ソラーテの新クリーンアップがお膳立てし、最後に意地を見せた背番号3。上位3チームから引き離されそうになる中、今季9度目のサヨナラ勝ちで踏みとどまった。
ペットボトルから、水滴が飛び散る。もう、水は出てこない。それでも大山はうれしそうに、仲間からの“祝福”を浴び続けた。何度も、何度もグラウンドに響いた雄たけび。「悔しい気持ちはありました」。情けなさ、もどかしさ…。その全てをプロ初のサヨナラ弾で吹っ飛ばした。
人生初めての景色が、そこには広がっていた。スタンドが歓喜に揺れ、その中に白球は消えてゆく。2点を追う九回だった。無死一、二塁で回ってきた、この日最後の打席。絶対にかえす-。思いはバットに込められ、白球は右翼席へと届いた。人生初めてだというサヨナラアーチに、笑みがこぼれた。
9日の試合後に、今季初めて4番を外れることが決まった。105試合背負い続けてきた4番の重責。それでも戦いは続く。うつむく気持ちを奮い立たせ、この日もグラウンドへと一歩を踏み入れていた。「4番を取り返す思いでやります」。浜中打撃コーチにはそう決意を示した。
4番から、6番に降格しても「試合に出れば、6番でもやることは同じ」と悔しさを押し殺し、自らに言い聞かせ続けた大山。思い返せば、あのときもそうだった。開幕してまだまもない頃。試合前に福留から声をかけられた。
「そんな暗い顔をしてもよくならない。いずれ打てるようになるから。しっかり前を向いて、明るくやれよ」
落ち込む気持ちは、いつしか表情に伝わっていた。投げかけられた先輩からの言葉。「それで気が楽になりましたし、周りから見られているんだなって感じました」。その日から気持ちが、自然と前に向くようになった。それはこの日も同じ。大山には、支えてくれる仲間がいた。
西が、梅野が、原口が大山へと歩み寄り、ヒーローを抱き寄せた。大山はタオルで顔を押さえる。思わず目頭が熱くなった。
「本当にうれしいの一言です!!」。この短い言葉に、これまでの苦悩が詰まっていた。拳を突き上げ、両手をパチンと鳴らす。勝利へと導く、美しい鐘の音が響いた。