【密着仕事人】山下幸志トレーナー ボールより選手追いかけて

 裏方の仕事にスポットを当てる企画「密着仕事人」。第3回は「トレーナー」です。阪神・山下幸志1軍チーフトレーナー(46)は05年から球団トレーナーとして猛虎戦士を陰ながら支えています。モットー、やりがい、トレーナーを目指した契機を明かしてくれました。

 今でも忘れられない言葉が、山下1軍チーフトレーナーにある。阪神の元トレーナーだった先輩から、こう言われた。

 「トレーナーは『ボールを見なくていい』と言われた。打った選手を見ておかないといけない。投手もボールじゃなくて、足を滑らせるかもしれない。それは『オー』って思ったけどね。今でもベンチでボールではなく選手を追いかける。サヨナラの場面、ボールを見てしまうけど、こけている人がいるかもしれないから」

 歓喜の渦がグラウンドを包んでも冷静さを忘れない。選手第一のスタンスは原点でもある。「一日一日、選手の状態は違う。難しいのは毎日、難しい(笑)。『これ、対応どうしよう』という時もいっぱいある。そういう時にチームドクターの皆さん、経験豊富な人から助言してもらったり」。

 先が読めないことが大変なのではないか?そんな問いかけに首を横に振った。「選手とは家族よりも長く一緒にいるしね。何かあったら家族なら心配する。そんな感じ。大変と思ったことはない。(自分の)家族が何か言ったら『大丈夫か』ってなる。家族やから、大変というのはないね」。選手とトレーナーという垣根を越えた関係性に温かさが宿る。

 試合のある日は、練習開始の約2時間半前から選手をサポート。試合後は治療やコンディショニングを行う。選手の状態を監督やコーチに伝える報告業務もチーフトレーナーの役割。選手が感じる痛みや張りを、自身は感じられないが「そこは信頼関係かな。コミュニケーションを取って『どうしたいのか』と。トレーナーって『聞き上手』じゃダメで『話させ上手』にならないと。引き出さないと。聞き上手はもちろんのこと、話させ上手になるのが一番」とモットーを教えてくれた。

 自身は専門学校までサッカー一筋。「初めて硬球でキャッチボールしたのが広沢さんで(笑)」。サッカーのクラブチームで指導をしていた際の先輩に「トレーナーを目指せ」と言われたことが人生の分岐点だった。指がちぎれそうなほどマッサージの基礎をたたき込まれ、修業を重ねた。金本前監督、矢野監督らのマッサージも手掛け「強く押せるやん」と褒め言葉をもらったという。

 若手のお手本となる選手は鳥谷。「彼を目指してほしいというか。彼は誰もができることを、誰もができないぐらいやる。トレーニング、準備、ケアに関していい教科書として見習ってほしい」。選手の影に隠れながら、これからもチームと選手を支えていく。

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