【私と甲子園】興南(沖縄)渡真利克則さん 忘れられない荒木の衝撃と黒土の感動

 興南時代の渡真利さん(本人提供)
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 高校野球を彩ってきた元球児の阪神関係者が、高校時代を振り返る「私と甲子園」。第8回は興南(沖縄)のOBで、阪神園芸で鳴尾浜のグラウンドキーパーを務める渡真利克則さん(55)です。高3だった80年夏。「5番・三塁」で甲子園に出場し、準々決勝でフィーバーを巻き起こした早実(東京)の1年生・荒木大輔(元ヤクルト)と対戦しました。たくさんの思い出が残る夏を振り返ってくれました。

 渡真利さんは沖縄の離島、宮古島で生まれ育った。「当時は島内に指導者がいなくて。野球は地元の大会前に集まってやるぐらいでした」。中学は陸上の走り高跳びに熱中。興南に進学していた姉が、当時の監督に推薦したことで宮古島を出て、本格的に野球を始めた。

 沖縄本島では兄、姉と3人暮らし。環境は恵まれていなかった。「甲子園に出られるなんて、夢にも思わなかったですね」。手作りのバーベルでのトレーニングなど地道な努力を続け、3年夏に甲子園出場を果たした。

 本州では初めて見た電車に驚き、沖縄とは違う米のおいしさに感動。聖地の広さにも圧倒された。「甲子園に出られたし、楽しくて」。興奮の連続で気持ちが盛り上がった少年は、いきなり活躍を見せる。初戦だった新湊との2回戦。初打席で右中間へランニング本塁打を放った。旭川大高との3回戦も3安打を放って快勝した。

 しかし、最後にとんでもない衝撃が待っていた。準々決勝・早実戦。3試合26回1/3無失点で勝ち上がり、フィーバーを巻き起こした1年生右腕・荒木大輔と対戦した。

 「直球はキレもあって速いし、スライダーもよく曲がる。制球もテンポもいい。全てで見たことないレベルの投手でした」

 2試合で30安打21点を記録していた興南打線が、1時間44分で3安打完封負け。「あっという間に終わりましたね」。二塁内野安打1本で高校生活最後の試合を終えた。

 のちに阪神へ入団し、ヤクルト・荒木と再戦。87年にはプロ初本塁打を放っている。だが、高校時代に対戦したインパクトが上回っている。「高校時代は思い出せても、プロはあまり覚えていないんです。それだけ高校時代はすごかったんでしょう」。球史に名を残したスターとの対戦は、今もいい思い出だ。

 荒木の衝撃とともに、忘れられない感動がある。「当時の沖縄の球場は赤土で、黒土は見たことがなかったんですが、甲子園のグラウンドに入ると、スパイクの歯がサクサクって入ったんです。ものすごく走りやすかった。だから、ランニングホームランを打てたと思うんです」

 あの感覚は、今も息づく。「私も常にああいうグラウンドを提供できるようにしています」。聖地での経験がグラウンドキーパーとしての礎となっている。

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