「ええ!?」「すげぇ」キハ85系のラストラン、惜別トラックが併走 スピード違反は?運転手の職業は 本人に聞いた
JR東海の特急「ひだ」「南紀」として鉄道ファンに愛された「キハ85系」が7月9日、最後の運行を終えました。1989年から活躍した特急用ディーゼルカー・キハ85系のラストランを見送ろうと駅や列車に人が詰めかける中、「キハ85系たくさんの思い出をありがとう!」「34年間おつかれさまでした」と惜別のメッセージを掲げたトラックが現れました。
「レンタカーのトラックだけど…ちょっとラッピング。白川口駅付近でキハ85系と併走してみました」とツイートした幻想郷電鉄(@1119Ef65)さん。トラックの荷台にメッセージを大書し、キハ85系と併走しました。乗客からは「すげぇトラックきた」「おいおいおい~!」「凄すぎるーーー!!」と驚きの声が上がりました。なぜトラックを走らせたのか、幻想郷電鉄さんに聞きました。
■チケット取れず「せめてお見送りを」
キハ85系は床を高くする構造の「ハイデッカー」と大きな窓が特徴で、車窓の眺めが良い車両として親しまれました。7月9日のラストランでは岐阜県の高山駅を出発し、高山、東海道各線を走り、終着の名古屋駅ではたくさんの鉄道ファンに出迎えられました。
ーートラックでキハ85系を見送ろうと思った理由について教えてください。
「元々、今回のキハ85系の臨時列車に乗ろうと思っていたのですが、残念ながらチケットが取れませんでした。そこで、『せめてお見送りだけでもしよう』と思い、車で併走出来たら面白そう、また、私はバスの運転手で大型免許を持っているため、大きな車体のトラックに、自分なりの感謝の言葉を書いて伝えようとしたのがきっかけです」
トラックは全長8メートル、6.3メートルの荷台いっぱいに感謝のメッセージを貼り付けました。レンタカー代は1万8千円、ガソリン代が2千円ほどかかったそうです。
ーーキハ85系がお好きなんですね。
「キハ85系は、一般的な電車と異なりエンジンで走る列車ですので、駅から出発時や急な上り坂でエンジンを豪快に唸(うな)らせ、大量の煙を吹き上げて走りゆく姿、そしてこの列車に『ワイドビュー』という愛称にあるように、窓がとても大きく、非常に見晴らしが良いところがこの車両の魅力だと思います。
今から17年ほど前、中学生になって初めて1人で行った岐阜駅。降り立ったホームの向かいで発車待ちをしていたのが高山行きのキハ85系、特急ひだ号でした。程なくして、時刻となり発車。岐阜駅全体に響き渡るような豪快なエンジン音と辺りが霞(かす)む程の煙…少年時代の私は一気にこの車両の虜(とりこ)になっていました。私のキハ85系との出会いです」
ーートラックで列車と併走するのは難しくありませんでしたか?
「今回併走を行った白川口駅ですが、高山本線はこの駅手前に急カーブがあり、通過する列車であっても速度を落とさなければならず、駅を出るところまで列車は時速40km程で通過していきます。そして、線路に並行する国道41号線の法定速度は時速50kmですので、トラックが僅かに先行できます。併走するなら白川口と決めたのは上記の理由です。白川口駅前の広場に停車し、サイドミラーに列車のヘッドライトが映った瞬間に車を出しました。駅を出た列車は徐々に加速していきましたので、併走時間は1分程だったと思います」
列車内から惜別トラックを撮影したJR高山線愛好家(@sabaandtetu)さんの動画では「おおっ!」「ええー!?」「すげえ・・」と驚きの声が上がり、乗客から拍手が送られている様子が映っていました。
ーー惜別トラックの登場に列車内は大盛り上がりでした。
「 乗車していらっしゃった数人の方が車内から動画を録っていただいたものを見たのですが、『えー!』とか『すごい!』と大変驚かれていたこと、私のツイートにも、お客さんからの感想がたくさん寄せられました。車内の方々からの反響はすごく伝わってきました」
列車が減速する区間で待ち構え、制限速度を守りながらトラックで併走する。一見、大胆な惜別トラックには、運転手さんのキハ85系への愛と緻密な計画が詰まっていました。
(まいどなニュース・伊藤 大介)