郵便物が盗まれるのでオンライン授業用のパソコンが送れない…アメリカでの超ハードな学習ボランティア体験が話題に

郵便物が盗まれるのでオンライン授業用のパソコンが送れない…

治安が悪いので自ら行くことができない…

インターネットのインフラが故障したまま何カ月も放置されている…

アメリカでの超ハードモードな学習ボランティア体験を紹介した投稿がSNS上で大きな注目を集めている。

「私はボランティアで読み書きを教えているんですが、ボランティアの統括者が独自のルートで見つけてきます。一度スカイプで教えた男の子は家に教科書と呼べるものがなく、いらない古いノートパソコンを家に送ると言ったら『郵便物は盗まれるからだめ』と言われ、では車で行くと言ったら『女一人でここに来てはいけない』とその子の祖父に言われました。

彼らは車がないので取りに来る事ができません。人に『孫が勉強するためにコンピュータを借りに行く』と言うのは、誰から盗まれる事になるかわからないので言えないと言われ、こんなに単純な事で誰かを頼る事がとても難しい。ダメ元で警察に電話でお願いしてみたら『ぜひこちらに送ってくれ』と快諾。送って届けてもらう。

やっとインターネットに加入しようとしても、インフラが何カ月か修理されず壊れたまま。プロバイダーに連絡してもその地域に行って配線する人がいないという理由でそのまま。ではワイヤレスにと加入したらルーターが郵送の途中でなくなったり、届いたはずのものが盗まれたりで、ネット加入に1カ月近くかかりました。

その後やっと勉強が始められると、スカイプで何度か二人で勉強できた二週間後にノーパソが盗まれまた振り出しに戻る。せめてその間に復習を、と問題を作って郵送するも届かない。また警察にお願いしました。別に悪い事をしている訳ではないのに、警察に電話するのは超ドキドキする私。

その子の祖父は片眼が盲目なのですが、害虫駆除の仕事が見つかり働けるように。その子もバイトすると言うので、もう少しマシなエリアに引っ越せないかと電話をかけまくると、ある家族が小さい離れをなんと一年タダで貸してもいい(光熱費は払う)と言ってくれるので、早速お引越し。

会社の人に貰ったノーパソとiPadを送り祖父は仕事に行くようになり、やっと安定して週に何回か読み書きできるように。今までの環境の悪口を二人で言いつつ、その子もあそこに戻りたくない!と恐怖を軸に猛勉強。他にやる事ないので成績爆伸び。

今年の6月はその子が小学校卒業したのですが、成績優秀者として賞状をもらったらしく写真を送ってきてくれました(現在は一週間に一度だけ今まで私が受け持って成績が追いついたグループで何時間かダラダラとZoomでミーティングする)。みんな似たような環境なので、普通なら引かれる悲惨な話で爆笑。」

この体験談の主は英語学習サイト「リード英語」を運営するしまきさん(@readeigo)。

日本の感覚では想像もできないようなアメリカ貧困層の学習環境に、SNSユーザー達からは

「色々考えさせられる話をシェアしてくださってありがとうございます。

"勉強できる環境がある"

それだけで実は恵まれてる事なんですよね。

でもそうやって根気強く関わってくれる人がいて、自分のやる気次第で人生が変わっていくんですよね。」

「在米時アメリカに生まれ育ってもちゃんとした英語(スラングとか文法的なものとか)話せない人が多くいる地域があると聞いたことがありました。

その人は母親に正しい英語を使えるようにと里子に出されたそうです。」

「ちゃんと荷物が届く。女性一人で出歩ける・・・

当たり前だと思ってる事が、実は幸せな事なんだとしみじみ思うお話ね」

など数々のコメントが寄せられている。しまきさんにお話をうかがってみた。

中将タカノリ(以下「中将」):少年が住んでいたのはどのような地域なのでしょうか?

しまき:当時少年が居住していた区域はカリフォルニアのコンプトンという、貧しくギャング活動で有名な地域のはずれです。殺人率はアメリカの中でも常にトップクラスです。

中将:しまきさんとオンライン授業を始めるまでの少年の学習環境についてお聞かせください。

しまき:公立学校に通っていました。アメリカのほかの地域は知らないのですが、カリフォルニアでは私が知る限り教科書はすべて置き勉で、教科書を家に持ち帰る事はありません。また、教科書は次の学年の生徒に持ち越されるため、学年の終わりに家に持って帰って来る事もないため、貧しい家庭の子供は家に学習教材がない事が珍しくありません。また、図書館などに行くのにも、貧しい方は不便な地域に住んでいて、車がないと図書館に通う手段がありません。学校の図書館からは本を貸し出してくれますが、一回で二冊ほどしか貸してくれず、学校が開いていない時間には開いていません。

中将:アメリカではこのような地域、少年のような境遇にある人が珍しくないのでしょうか?

しまき:この少年の住んでいた区域は特別治安が悪かったと思います。ですが、家に学習教材がない、インターネットへのアクセスやデバイスがない、という子供はアメリカ全体では一般的ではないものの、貧困層では非常に一般的です。図書館や本屋へ徒歩なら二時間なども珍しくはなく、子供一人で歩き回るのは危険が多いため、現実的ではないため、実質勉強する素材がありません。

中将:オンライン授業を始めてからの少年の勉強に対する取り組みはいかがでしたか?

しまき:少年は小学校3年生の時点で幼稚園程度の読み書きレベルでしたが、貧しい環境から身を興した方からスカイプでお話していただいたり、ギャング出身で刑務所に行った方などにもお話をしていただいたりして、色んな人に今の環境から抜け出そうと思ったら勉強しかないと影響を与えていただきました。他にあまりやる事がないのと、学校で勉強が普通にできるようになると皆から一目置かれるというのが自信になったようで、時々嫌がりながらも、非常に頑張ってくれました。

中将:投稿に対し数々のコメントが寄せられていますね。

SNSでの反響は驚く事ばかりでした。以前に別のツイートで、「日本は勉強しようと思えばやれる環境がある良い国だ」と言ったら、「それはアメリカでもそうだろう」「日本の現状を知らないのでは」というリプをたくさんいただきました。アメリカでの、「本人、家族、支援者全員にやる気があり、誰も積極的に邪魔をしようとしていないのに、それでも純粋に環境のせいで勉強ができない事がある」という体験は私には驚きだったので、それをシェアしたいと思い投稿しました。「この国では支援者がいるくらいでは教材を手に入れる事さえままならない」という厳しさには本当に驚きでした。私自身が母子家庭で勉強がまったくできず、日本でも有数の貧困区域に住んでいましたが、ここまでの事は経験したことはありません。

日本人の方から見ても、ほとんどの方には驚きだったのではないかと思います。貧しい生活をしていた私にも、アメリカの貧困の厳しさは、「抜け出そう」という強い意志だけではどうにもならないほどの厳しさを感じました。日本に住んでいるとここまでの事はなかなかないので反響に繋がったのかなと思います。私は本当にごく一部の人に向けてシェアしたつもりだったので、ここまで反響をいただいた事には心の底から驚きました。

 ◇ ◇

アメリカにももちろん国として素晴らしい部分は多々あるのだが、暴力、人種差別、貧富の差など人間社会の負の要素に対する取り組みの甘さがこのようなエピソードを生むのではないか。我々も今日本にある当たり前の環境を保ってゆけるよう努めたいものだ。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)

関連ニュース

ライフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス