足元にアートのある商店街 神戸・三宮のストリートミュージアムに新たな作品が仲間入り

街を歩く人々の足元にアート作品が並ぶ、そんな斬新な見せ方をする商店街がある。兵庫県神戸市にある、三宮センター街2丁目商店街だ。商店街でありながら、24時間鑑賞できる“ストリートミュージアム”。そこに16点目となるアート作品が仲間入りした。

■希望と夢が見えるアート

約60ものショップがたち並ぶ同商店街に、新たなアート作品がまた1点加わった。三重県伊賀市を拠点に活躍する作陶家、谷本景氏の「古代から 2020」だ。

弥生時代、祭りに用いられたとされる銅鐸(どうたく)をイメージしたもので、黒の地に、大小さまざまな朱色の円形がひしめき合うように配されている。はるか昔に使われた銅鐸に、まるで細胞のように静かに躍動する円形模様という組み合わせが目を引く。

渋味のある赤が印象的だが、古来、朱色は魔除けの力があるとされ、寺院や宮殿などに使われてきた。

谷本氏は「朱色は太陽を表現する色。人々が新型コロナウイルスという疫病をはねのけて、未来に向けて希望と夢を抱けるようにと願いを込めました。作品が持つエネルギーを感じてもらえたらうれしい」とコメントした。

■いろんな表情を持つ神戸を知って欲しい

谷本氏が暮らす伊賀は、昔から近畿地方との結びつきが強く、数多くの古墳や遺跡が点在し、銅鐸も出土する。10年ほど前から取り組む銅鐸をイメージした造形作品「古代から」シリーズには、ふるさとの歴史が背景にあるのだろう。

数年前に谷本氏の作品を観て感銘を受けたという同商店街振興組合の久利計一理事長は「ぜひ谷本さんに」と、今回の収蔵作品の制作を依頼。ほかにも茶道具や陶板のシリーズ作品も手がける中で、「銅鐸をモチーフにしてほしい」と提案を受けたときは嬉しかったという。伊賀と同じく、神戸市も灘区の六甲山南麓から国宝「桜ヶ丘銅鐸」14個が出土するなど、弥生時代から人が定住し、祭りごとを行っていた歴史を持つからだ。

谷本氏は「おしゃれでハイカラとはまた違う神戸の顔も、アートを通じて知っていただきたい」と語った。

阪神・淡路大震災を機に、アートの力によって街をよみがえらせようと、同商店街は2006年から毎年1作品ずつ、路面にアート作品を収蔵・展示する取り組みを続けている。街を歩く誰もがいつでも気軽に本物のアートに触れられるようにと、今回加わった16点目。訪れる機会があれば、足元に広がるミュージアムに目を凝らしてみてはいかがだろうか。

(まいどなニュース特約・國松 珠実)

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