「引っ掛かれても噛まれても放さない!」コンビニ店長が血まみれになりながら保護した、迷子猫・グレコ

 この子がノラ猫? グレコちゃんはそう言いたくなるほどきれいな猫です。昨年12月下旬に神奈川県伊勢原市にあるローソン駐車場で保護されました。

「7匹くらい集まっていて気になったので調査を始めると、地域の組長さんにエサをやるなと叱られてしまって。ご近所で問題になっていたみたいなんです。でも、1匹ずつでも保護して不妊手術した上で里親さんを探したいと伝えると分かってくださいました。それからチラシを作ってご近所の方の許可を得て、個人ボランティアとして活動を始めたところだったんです」

 そう話す村越英紅さんが最初に保護したのがグレコちゃんでした。翌日には預かりボランティアさんの家に届ける予定でしたが、車の中でケージから出てしまい、サイドブレーキペダルの上にあるくぼみへ。JAFを呼んでも解決せず、村越さんは自宅から15分程離れた厚木市のディーラーに車を走らせました。市をまたいでおり、そこはもうグレコちゃんのテリトリーではありません。

“事件”はそんな場所で起こりました。救出するにはハンドルを外す必要があり、作業前に呼んでもらうはずだったのですが、何やら騒々しいと外に出てみると…目の前に走り去るグレコちゃんの姿が!一瞬の隙を突いて車から出たらしく、直前までノラ生活だったグレコちゃんはスタッフが追いかければ追いかけるほど猛ダッシュ。とうとう見失ってしまいました。

 村越さんはすぐに迷子チラシを作り配布を始めました。

「近くに川が流れていて、まさかと思いながら川向うにも配りに行ったんです。運送会社さんなのか、ちょっと強面の方たちが車の横でタバコを吸っておられました。思い切って声を掛けると、『見つけたらすぐ連絡するから』と、チラシをクリアファイルに入れて貼ってくださったんです」(村越さん)

 この“強面の方たち”がグレコちゃん発見のきっかけを作ってくれるとは、このときは思いもしなかったでしょう。年明け1月7日、一人から電話がありました。「セブンイレブンの店長がその猫が店に来ると言っている」と。迷子猫の話をしていた常連客を店長の長岡舞さんが覚えていて、会社に連絡してくれたのです。

「年末、帰宅しようとした店長さんに鳴いてついてきたそうです。やきとりをあげると翌日から毎日、顔を出すようになったと。お店は川を渡ってすぐの所じゃないんですよ。手前にはお寿司屋さんもあるのに、そこを越えてセブンまで行ったのは、前にコンビニでエサをもらっていたからかもしれません」(村越さん)

 しかも、長岡店長は元トリマーで動物好き。それを察知して近づいたのだとしたら、グレコちゃんの嗅覚、恐るべし!です。

 村越さんはグレコちゃんと再会でき、差し出したごはんも食べてくれましたが、食事が終わるとさっさとどこかへ。そんなことが数日、続きました。グレコちゃんにとって村越さんは捕獲された“怖い人”だったのでしょう。

「私のことはかなり警戒していました。毛艶がなく怯えた様子で。ローソンでは仲間がいてエサも豊富にあったから天真爛漫な印象だったのですが、このときは険しい顔をして生きるのに必死なのが伝わってきました。セブンの入口にちょこんと座ってみんなに鳴いていたそうですが、ローソンではなかったこと。生き抜くためだったと思います」(村越さん)

 保護団体から最新式の捕獲器を借り、あと一歩まで行ったこともありましたが捕まえられず。そうこうしているうちに「他の猫に追い立てられていた」「246(国道246号線)を渡っていた」など心配な情報が次々と。長岡店長からは「かわいいから馴らして連れて行こうとする人もいる」と聞きました。

 焦りが生まれた村越さんに「グレコちゃん、保護!」の一報が入ったのは1月15日のことです。駆け付けると、セブンの買い物カゴをかぶせられたグレコちゃんがいました。

「店長さんにそれまでにないほど大きな声で鳴いたそうです。それが『助けて!』と言っているように聞こえたと。だから『今日、絶対に捕まえる!』と決めて保護してくださったと聞きました」(村越さん)

 問題はそこからどうやって捕獲器に移すか。不用意にカゴを持ち上げるとまた逃げてしまいます。

「店長さんが血まみれになりながら抱っこして、捕獲器に入れてくださったんです。『大丈夫。心配ないよ』と優しく言い聞かせながら。『ここで逃がしたらもう捕まえられない!引っ掛かれようが噛まれようが放さない!』という気持ちだったと言ってくださいました」(村越さん)

 こうした行為が推奨されるわけではありません。感染症の心配もあり、長岡店長には病院へ行ってもらったそうですが、幸い、抗生剤を投与するなどして大事には至らず。グレコちゃんを保護できたのは、リスクを承知の上でトライしてくれた、元トリマーの長岡店長のおかげでした。

 グレコちゃんは今、預かりボランティアさんの家でゆっくりと人馴れリハビリ中。猫エイズ陽性であることを理解し、温かく迎えてくださる里親さん募集中です。

(まいどなニュース特約・岡部 充代)

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