藤井隆が語る、特別な存在・薬師丸ひろ子 神対応歌唱にいまだ涙

人生で最も多く見返した映画は、薬師丸ひろ子主演の角川映画『Wの悲劇』(1984)。VHSも買い、DVDも所有している。それが角川春樹最後の映画監督作と銘打たれた『みをつくし料理帖』(10月16日公開)で共演できるなんて…。しかも夫婦役。「オファーをいただいたときは、冗談抜きに息が止まりました」。2012年のある出来事を通して、藤井隆(48)にとって薬師丸は憧れを超えて特別な存在になった。あの日の『Woman-Wの悲劇より』の歌声を思い出すと、今も涙がにじむ。

2012年に吉本興業が主催した第4回沖縄国際映画祭。その上映イベントに際して藤井は、青年期から熱狂的ファンだった『Wの悲劇』をリクエストした。「薬師丸さんのビデオメッセージかお手紙をいただけないものだろうか?と欲張って甘えて会社に相談したら、なんと薬師丸さんご本人が実際に来場してくださったんです。上映後には帰りの飛行機の時間もあるのに『お客様へお礼の気持ちを歌で返したい』とアカペラで主題歌を、しかもフルコーラス歌ってくれたんです。今思い出しても鳥肌が立ちます」と鮮明に記憶している。

『Wの悲劇』を最後に、薬師丸はそれまで所属していた角川春樹事務所から独立。トップアイドル女優としての知られざる葛藤も聞いた。「女優としてかなり追い込まれた作品だったそうで、撮り終えたら女優を辞めようとさえ思っていたそうです。モノ作りは過酷です。そのお話を伺ったときに、そこまで思いつめた結果生まれた作品を好きでいる私ってどうなのだろうか?とも思いました。でも歌声を聴いたときに『本当に好きでよかった。好きな人をずっと好きでよかった』と思えた。それは映画の力であり、歌の力であり、薬師丸ひろ子さんの人柄ゆえ。何かを好きになれるって、こんなに幸せなことなんだと感じることができました」と涙をにじませる。

それから約8年後。まさかの夫婦役での共演だ。「しかも監督は角川春樹さん。もう字面が頭に入ってこなくて、どうしたものかと思いました。でも私は図々しい性格なので嬉しかったです」と恐縮しきり。演じたのは澪(松本穂香)が働く・つる家の常連客で戯作者の清右衛門。妻役の薬師丸やご近所さんの浅野温子との丁々発止のやり取りが笑いを誘い、人情劇をより豊かにする。

「私としては許容範囲を超える出来事ですから、一人では耐えることができず実兄に相談したくらいです。『リラックスしてできました』とは口が裂けても言えることではありません」と襟を正して「撮影中は映画祭のお礼も改めてできましたし、薬師丸さんの角川さんへの思いも聞かせていただくことができました。カメラが回っていないところでコミュニケーションを取る時間を作ってくださったことで、長年連れ添った夫婦の空気感を出すことができました。それはすべて薬師丸さんのおかげです」。誠実で優しい変わらぬ人柄に、感謝しきりだ。

(まいどなニュース特約・石井 隼人)

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