仕事一筋だった女性社長の生活を一変させた、石垣島の捨て猫タミー

 仕事一筋だった女性の生活が、1匹の猫との出会いで一変しました。北須賀薫さんは不動産関連会社勤務を経て独立。元同僚には「超超超仕事人間」と言われ、親族からは「仕事のしすぎで私生活がおざなりになっているのでは」と心配されるほどでしたが、今は猫のタミーちゃんが癒しと潤いを与えてくれています。

 猫を飼うことを決めたのは、中古マンションを購入したのがきっかけでした。

「もともと“犬派”だったんです。でも一人暮らしで仕事が忙しい私に犬を飼うのは無理だろうと。それでもペット可の物件を探していて、出会ったのが今の部屋でした。前に住んでいた方が猫を飼っていたようで、床は傷だらけでクロスはボロボロ(笑)。でもクロスは張り替えればいいし、床は新しい傷がつくことを気にしなくていい。壁にはキャットステップも取り付けられていて、猫を飼いたくなる部屋だったんです」(北須賀さん)

 床には無垢材が使用されているため傷が目立ちますが、それがかえって“味”になっています。北須賀さんは自分好みにリノベーションした部屋に、猫を迎えることを決めました。近くに住む妹と姪っ子に、時々お世話を手伝ってもらえるかを確認してから。

 ペットショップで買うのではなく保護猫を迎えたいと考えて、譲渡会へ足を運んだり、里親募集サイトでいろいろな猫を見たり…そうして目に留まったのが沖縄・石垣島出身のタミーちゃんでした。

 石垣島にはサザンゲートブリッジという橋で石垣港とつながる埋め立て地があり、人工ビーチや緑地公園があるのですが、そこには多くの猫が捨てられると言います。「猫捨て島」と呼ぶ人もいるとか…。タミーちゃんはそこで保護されました。

「生後半年くらいのとき、現地でTNR活動(T=Trap/捕獲し、N=Neuter/不妊去勢手術を施し、R=Return/元の場所に戻す)をしている方が捕獲して、手術のあとリリースしたらしいんです。でも猫社会に馴染めなかったのか、やせ細った姿で発見されて、改めて保護されたと聞いています」(北須賀さん)

 里親募集をしたものの島では見つからず、あっという間に4年の歳月が流れました。そんなとき、大阪で猫の安全な生活環境づくりと殺処分ゼロを目指して啓蒙活動や支援を行っている『一般社団法人キャット・ソシオン』が「大阪なら里親さんが見つかるかも」と引き取ってくれたおかげで、北須賀さんと出会うことができたのです。

 タミーちゃんに会うために足を運んだ譲渡会。仕事で遅くなった北須賀さんは残り15分で駆け込みました。そして、お目当てのタミーちゃんのケージへ行って手を差し出すと、ゴロゴロとのどを鳴らしたと言います。

「担当の人に『さっきの方には咬みついたんですよ』って言われて、嫌われてはいないなと思いましたね」(北須賀さん)

 他にも里親希望者がいたようですが、その人は第2希望。北須賀さんは第1希望にタミーちゃんの名前を書き、優先的にトライアルに入ることができました。

「猫は新しい環境に慣れるのに時間が掛かるから、2~3日は便が出ないかもしれないと言われていたのに、その日のうちに大きいのを4本しました(笑)。私がソファに座ってテレビを見ていたら隣でくつろいでいたし。報告すると、『そんな猫は聞いたことがありません』って言われましたね」(北須賀さん)

 トライアル初日から北須賀さんとの生活に馴染んでいたタミーちゃん。もちろん、そのまま正式譲渡となりました。仕事一筋だった女性社長の生活がどう変わったかと言うと…。

「とにかく仕事を早く終わらせて帰るようになりました。家でできる仕事は持ち帰ってでも早く帰る。外食は減りましたし、誰かと食事に行っても『タミーが待ってるから帰る』って平気で言いますね(笑)。無理してるわけじゃなくて、それが自然なんです。生活に潤いが生まれました。いてくれて良かったって、コロナで自粛生活のとき余計にそう思いましたね」(北須賀さん)

 自粛期間中にはタミーちゃんの抜け毛を集めて帽子やカチューシャを作りましたが、以前の北須賀さんには考えられなかったこと。スマホの中にあふれかえるタミーちゃんの写真を送っては、友人たちから「あの北須賀が?」と驚かれています。

(まいどなニュース特約・岡部 充代)

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